答えのないこと 第二十二回 時空を超える願い
誤解を恐れずに言うと、 私は小さい子が長らく苦手だった。 真っ直ぐな瞳にどこか見透かされそうな そんな恐れもあったのかもしれない。
けれど小学生の頃は、こう強く願っていた。
私はいずれ大人になると仕事に夢中になるだろうし、 子どもの頃に感じた大半のことはきっと忘れてしまう。
だから、今感じてることだけは覚えていよう。 家に帰った時に、母がいるという温かさ、 そして、弟がいるという心強さを。
縁があり、母となる機会を得た。 それまでの恐怖は博愛に変わった。
しかし、そんな幼少期に感じた感覚を 今、バトンのように受け取りつつも、 仕事への影響や二児育児の大変さという大人の都合で 第二子を考える余裕がないことにも気づく。 “小さな私”の直感はやはり当たっていた。
大人になれば成熟し、不完全さがなくなる。 そんなものは幻想だな、と改めて感じながら 今日もバタバタと娘のお迎えに向かう。