第二十一回 答えのないこと

答えのないこと
第二十一回 群れない、とは自由なのか?

ふと思い出したことがある。

小学生の時。
何日か不登校が続いた
帰国子女の女の子がいた。

私がクラスのいわゆる派閥に
属していなかったからだろう。
ある日、担任の先生から頼まれて
その子の家に遊びに行った。

自宅を訪ねると、彼女はすぐに
江戸幕府三代将軍・徳川家光の乳母、
春日局を題材とした自作のシナリオを見せてくれ、
私はそのマニアックな情熱に圧倒された。
あっという間の数時間だった。

とはいえ、それを機にその子と
とりわけ親密になる訳でもなかったし、
その後、彼女が学校に戻ってきたのか
そのまま転校してしまったのか
もはや記憶も定かではない。

ニュートラルなのか、ドライなのか。
人との距離のはかり方は、
今と大して変わっていないのかもしれない。