『宗教と現代がわかる本 2015』渡邊直樹

『宗教と現代がわかる本 2015』
渡邊直樹(責任編集) (平凡社 2015年)

今年のはじめ風刺漫画を掲載する『シャルリー・エブド』誌の編集部がイスラム過激派に襲撃されたテロ事件はいまだ記憶に新しいところです。日本では「テロはよくないが表現の自由にも、他者の尊厳という制限が設けられるべきでは」という意見も目立っていたように思います。ただひとつはっきりとしていたことは、宗教のことがわからないと問題の本質が見えてこないということでした。

今回問題の起きたフランスで生まれ育ち、また敬虔なクリスチャンの両親のもとで育った私は、幼い頃から「宗教」というものに向き合う機会が少なからずありましたが、今改めて日本における宗教に興味をもっています。宗教が独自の進化を遂げてきた日本では、どんな問題が起こっているのか。そこで最近手にしたのが「週刊アスキー」や「婦人公論」などで編集長を務めてきた渡邊直樹氏が編集し、2007年より毎年発行されている『宗教と現代がわかる本』。特集やインタビュー、レポートなど切り口が多岐にわたり、雑誌のように斜め読みや拾い読みをしながら気軽に読み進めることができます。

『宗教と現代がわかる本』2015年版の特集は「マンガと宗教」。手塚治虫の『火の鳥』や『ブッダ』、宮崎駿の『風の谷のナウシカ』、貞本義行の『新世紀エヴァンゲリオン』、浦沢直樹の『20世紀少年』など、多くの人が知っている作品を扱っていて読みやすい。テーマは「イスラーム国とカリフ制」や「四国霊場の開創一二〇〇年」、「集団的自衛権と宗教界の反応」などから「アナと雪の女王」や「パワースポットの功罪」まで大小さまざま。その他、映画や展示会レビュー、人物の発言なども交え、現代の宗教問題を細部にわたり取り上げています。宗教に興味がある人もない人も、最低限知っておきたい知識が網羅された一冊です。

以下は「2014年の物故者」より抜粋

赤瀬川原平(芸術家、作家)
最近の「癒し」という言葉の流行がどうも真に迫らないのは、人間が癒されることばかりを考えているからだろう。癒されたとか、勇気をもらったとか、受身のことばかりを考えている。それは人間、物をもらうのは嬉しいことだが、神様からもらおうと思っちゃいけない。(……)たしかに西洋の契約の社会ではそうなのかもしれないが、日本の七福神を見ていてつくづく違うものを感じた。神に癒されるのではない。神々を癒しているのだ。人間が、神様も大変ですねと、癒してさし上げている。『大和魂』(新潮社、2006年)より

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