映画メモ・2024

 昨年、最後に観たのはシネマヴェーラ渋谷で掛かっていたダグラス・サーク特集の4作品だった。『ヒトラーの狂人』『僕の彼女に何か?』『社会の柱』『エイプリル・フール』の4本で、最初の2本は渡米してダグラス・サークを名乗ってから、後半の2作はドイツ時代の作品でこのときはデレトフ・ジールクという名義だった。
 映画を観るときはいつもただぼんやりと観ている。画面の中で起こるすべてを記憶しよう、などとは思わないし、なにか感想を得ようとも考えないし、ましてや上映中にメモを取るなど一度もしたことがない。ただぼんやりと観て面白かったり感動したときはうれしいがそれだけだし、退屈だったときは上映中に眠っているし、観終わったあとは忘れるだけだ。それなのにどうして観ているか、といえば、けっきょく好奇心を充したいからなのだろう。
 これから始まる物語を、まったく期待せずにながめていると、映画によっては開巻まもなく派手な演出を仕掛けてきてこちらの気を引こうとする。あるいは、そんなギミックは一切使わずに淡々と話を語っていくスタイルの作品もある。あまりに淡々と、なんの事件も起こらないまま話が進むと、すでにこちらは眠りに誘われているか、映画からはなれてべつのことを考えている。『ヒトラーの狂人』もそんなタイプの作品だった。チェコの小さな村はナチスの侵攻で危機に直面している。現状を憂慮しているが耐えている老人たち。レジスタンスに身を投じる若者たち。どちらにしても、つよいキャラクターというのでもなく、ああ、以前にも観たようなストーリーだな、と、すっかり映画に飽きているころに、ようやくジョン・キャラダイン演じるナチの護民官が登場する。悪の権化のようなこの男は次々と凶暴な振る舞いを披露して、大学の女子学生が窓から身投げしてしまう場面にさしかかったときには、先ほどまであんなに退屈だと思っていた映画にすっかり引き込まれている。
 毎度ただぼんやり観ているじぶんが物語に引き込まれてしまうのは、たいていは暴力か、つよい性描写、あるいは強烈なキャラクターが登場する瞬間で、つまりじぶんは作り手の策に簡単に引っ掛かってしまう愚かしい観客のひとりなのだ。
 ところでその日に観た2本目の作品『僕の彼女に何か?』は打って変わって老いた億万長者が小さな街で大活躍する総天然色のコメディで、その楽しさ、面白さに初っ端からすっかり魅了されてしまった。子供のころに好きだった石森章太郎や手塚治虫、つのだじろう、藤子不二雄、といった漫画家たちはシリアスなストーリー漫画もギャグ漫画も器用に描き分けていたことを思い出したりした。主演のチャールズ・コバーンという俳優は、昔から顔だけはよく見ていたものの、シネマヴェーラで多くのハリウッド映画を観るようになってからその名前を覚えた。
 つぎの『社会の柱』はドイツ時代の作品で、前半は設定がよく把握できず、これまた物語に引き込まれるまでに時間を要した。この3本目の映画を観るころにはこの作家独特の演出の圧、というか重厚さ、わるく言うなら、しつこさ、のような感触がわかってくる。こうした発見こそが監督の特集上映のたのしみだな、などと考えるがじぶんは映画研究家でも評論家でも映画制作者でもないので、考えるのもそこで終わりとなる。
 その日の最後に観た『エイプリル・フール』という作品。これは舞台演出家だったデレトフ・ジールクの最初の長編映画なのだという。じつに楽しいコメディで、ちょっと初期の市川崑を思い出しながら観ていた。これもわるく言うと、才気煥発、という言葉で称賛されたい、という下心のある演出。市川崑でいうと伊藤雄之助や尾美としのり、にあたるような人物も登場する。なんといっても悪戯好きでチャーミングな皇太子がすばらしい。この俳優はなんという人なのだろう、と思いながらも帰宅するとすっかり忘れてしまっている。これが映画という娯楽とじぶんとの、昔からの距離である。



1月
1.首 @TOHOシネマズ日比谷
★★2.ファースト・カウ @ヒューマントラストシネマ有楽町
> 今年の映画鑑賞、劇場ではようやく本日より。一本目はタイトルの通り「首」をかしげてしまう作品だったが、続けて観た「ファースト・カウ」に感動した。ケリー・ライカート初体験。観終わってしばらく、二十代前半に戻ったような心持ちとなり陶酔する。今年も映画を観るために外出しよう、と考えた。

★3.羽織の大将 @ラピュタ阿佐ヶ谷
4.カラマリ・ユニオン @ユーロ・スペース
5.ハリウッド・テン @シネマヴェーラ 短編
 大いなる夜 @シネマヴェーラ
★6.アンダーワールド・ストーリー @シネマヴェーラ
> サイ・エンドフィールド「アンダーワールド・ストーリー」ヴェーラ。仕事でしくじって地方紙で巻き返しを図るヤクザな記者という設定はビリー・ワイルダー「地獄の英雄」の焼き直し、と思ったらコチラが先!「実録モノに出る佐分利信」みたいなハーバート・マーシャルが良い。ラストの台詞も洒落てる。

★7.流砂 @シネマヴェーラ
8.突貫小僧 @古石場文化センター
★9.白い壁畫 @ラピュタ阿佐ヶ谷
10.がめつい奴 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★11.私は彼女をよく知っていた @国立映画アーカイブ
12.猿女 @国立映画アーカイブ
13.深夜復讐便 @シネマヴェーラ
★14.幸福への招待 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★15.破局 @シネマヴェーラ
★★16.風と共に散る @国立映画アーカイブ
★17.街の野獣 @シネマヴェーラ
★18.恐喝の報酬 @シネマヴェーラ
★19.セーラー服と機関銃 @目黒シネマ
20.風花 @目黒シネマ
21.真夜中の処女 @シネマヴェーラ
★22.娘三羽烏 @シネマヴェーラ
23.死者との結婚 @シネマヴェーラ
24.時は止まりぬ @国立映画アーカイブ

2月
★25.アリスの恋 @早稲田松竹
> M.スコセッシ「アリスの恋」早稲田松竹。大学生の頃に観ている、と思ったらなんと初見だった。勘違いしたまま死ななくて幸運。べつに興奮も感動もないまま観終わったが、エンドロールのピアノを弾く手を真上からとらえた画を観ていたら込み上げてしまった。
> 「アリスの恋」のエレン・バースティンがレストランでエレクトリックピアノを弾いて歌のオーディションを受ける場面を観て思い出したのが、メレディス・ダンブロージオのファースト・アルバム。この映画を観た人ならぜったい反応するはずの一枚。この人が吹き替えしているのかと思ったほど。
> クリス・クリストファースンと三上真一郎。
#似ている
#アリスの恋

26.やっさもっさ @神保町シアター
★27.オープニング•ナイト @新文芸坐
28.続・浪曲子守唄 @シネマヴェーラ
29.女囚さそり 701号怨み節 @神保町シアター
★30.彼女だけが知っている @シネマヴェーラ
31.痛快なる花婿 @シネマヴェーラ
32.私は忘れない @シネマヴェーラ
33.アナタハン @シネマヴェーラ
34.ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 @目黒シネマ
35.ビフォア・サンセット @目黒シネマ
36.地獄に真紅な花が咲く @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★37.裸の太陽 @ラピュタ阿佐ヶ谷
38.疑惑の夜 @ラピュタ阿佐ヶ谷
39.十七才の逆襲 暴力をぶっ潰せ @ラピュタ阿佐ヶ谷
40.空港の魔女 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★41.風の中の瞳 @シネマヴェーラ
★42.カサンドラ・クロス @新文芸坐
43.サブウェイ123 @新文芸坐
★44.流離の岸 @シネマヴェーラ
★45.女の園 @シネマヴェーラ
★46.暴力団 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★47.砂漠を渡る太陽 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★48.俺が地獄の手品師だ @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 小沢茂弘「俺が地獄の手品師だ」ラピュタ。以前「裏切者」「アマゾン」を観て全く楽しめず、本日もパスしようかと思ったが意外や大満足。この笑いのセンス、東宝のクレージー映画に近い?千恵蔵が自らを「ヘンなおじさん」と認めて芝居を楽しんでいるのが最高。小林信彦や大瀧詠一も認めてるのかな?

★49.永遠の僕たち @目黒シネマ
★50.50回目のファースト・キス @目黒シネマ
51.火の壁 @シネマヴェーラ
★★52.わが恋せし乙女 @シネマヴェーラ
★53.かあさん長生きしてね @シネマヴェーラ
★54.サラリーマンの勲章 @シネマヴェーラ
55.自殺を売った男 @シネマヴェーラ
★56.男の血潮がこだまする @ラピュタ阿佐ヶ谷
57.十七才のこの胸に @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★58.消えた密航船 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 村山新治「消えた密航船」ラピュタ。松田定次の「ゆうれい船」とか新東宝の「女奴隷船」みたいな映画かと思ったら今井健二が私立探偵?のハードボイルド。秘密を知るバーのマダムが久保菜穂子。港街の新聞主筆が岡田英次。格闘するイマケンと曽根晴美。ピーコートの室田日出男。これで79分。大満足!

3月
★★59.恐喝 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 渡邊祐介「恐喝」ラピュタ阿佐ヶ谷。評判通りの傑作。丸顔で白髪頭の紳士で通称「男爵」というパクリ屋が坂本武だったのにも驚いたが、いちばんビックリしたのは無人のナイトクラブのステージでジーン・クルーパばりのジャズ・ドラミングを披露する潮健児!お見それしました。。

★60.赤いダイヤ @ラピュタ阿佐ヶ谷
> きのうラピュタ阿佐ヶ谷で観た「赤いダイヤ」で曽我廼家明蝶の内縁の?妻を演じていた美女の名前が判らず調べたら藤田佳子。女優廃業後は八代亜紀の「なみだ恋」の作詞家・悠木圭子。最初の夫は俳優の山田真二。現在の夫は作曲家・鈴木淳。って鈴木淳の元妻は作詞家の有馬三恵子でしょ?凄い人たち。。
> この話、まだ続く。悠木圭子が鈴木淳の死後、亡き夫を思って書いた詞に曲を付けたのが八代亜紀。ここまでは良いとしてその曲のタイトルが「想い出通り」。コレ、鈴木淳の最初の妻だった有馬三恵子が南沙織に書いた曲と同じではないか。二人の作詞家と結婚した作曲家・鈴木淳。。

61.遊民街の銃弾 @ラピュタ阿佐ヶ谷
62.リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング @角川シネマ有楽町
★63.愛と死の谷間 @神保町シアター
64.愛情の系譜 @神保町シアター
★★65.おかしな奴 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 沢島忠「おかしな奴」ラピュタ。2016年以来。また泣いた。2度目ゆえ佐藤慶が南田洋子にあらたまって挨拶する場面から涙が止まらず。映画の登場人物を過度に美化する訳ではないが「戦争に反対する唯一の手段は」を体現したのがあの「しゃもじ」の最後の高座ではないか。また泣いてる。反戦映画の傑作。

★66.続・おんな番外地 @ラピュタ阿佐ヶ谷
67.あの雲に歌おう @ラピュタ阿佐ヶ谷
68.暗黒街仁義 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 冒頭、羽田空港からずっと鶴田浩二を尾行するも、まもなくホテルのトイレで返り討ちに遭う八名信夫の風貌が白黒コンビの靴を除けばまるでミッシェル・ガン・エレファントのアベさん、もしくはウエノさんのようでイカしてた。覚え。

★69.ある正直者の人生 @シネマヴェーラ
70.トア @シネマヴェーラ
★★71.ならず者 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★72.あばずれ @ラピュタ阿佐ヶ谷
73.喜劇 団体列車 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★74.懲役十八年 仮出獄 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> きのう観た降旗康男「懲役十八年 仮出獄」。安藤昇と伊丹十三と若山富三郎が金塊を強奪する話。いわゆる「フレンチノワール」を狙った滑り出しにワクワクするが、後半見事に失速し観客を落胆させる。だが忘れられないのは啞なのにやけに饒舌な伊丹十三の存在感。城野ゆきとゴーゴーを踊る姿はダサかったが。なんとも残念な失敗作。

★75.童年往事 時の流れ @シネマヴェーラ
★★★76.愛と死 @神保町シアター
> 「オレは、、人間の底が浅いからな、、長くなるとボロが出るんだ」
栗原小牧との仲を尋ねられて、親友の新克利に応える横内正の台詞。
中村登「愛と死」神保町シアター。なんとも通俗的なメロドラマなのに、またしてもこの監督に捩じ伏せられた。オレのいちばん好きなタイプの映画。★★★
> 中村登「愛と死」神保町シアター。ファッション、音楽、街の風景も含めてオレは1971、72、73年くらいの時期に作られた日本映画を盲目的に好きなのだろうか。と疑いたくなる程、上映中ずっとフワフワと陶酔していた。栗原小巻の美しさに惑わされラストまで。こんなに薄っぺらな映画なのに。
> 「愛と死」良かったのは新克利と横内正が日光浴する女性を覗き見してしまう坂道。あれは何処?栗原小巻の誕生パーティーのハードロック。芦田伸介の花婿に対する長台詞。恋に破れる横内正のその後をもっと描いてほしかった。つい最近、この魅力的な俳優のレコードを入手したばかりだった。

★77.アンナ・マグダレーナ・バッハの日記 @シネマヴェーラ
★78.坊やの人形 @シネマヴェーラ
★★79.燃える平原児 @シネマヴェーラ
> ドン・シーゲル「燃える平原児」ヴェーラ。初めから終わりまで緊迫感が途切れることのない映画。「総長賭博」「県警対組織暴力」そしてなぜか昨年末に観た役所広司の映画を思い出した。頼むから何も起きないでくれ、と祈りながら観た映画。オレはあの映画が好きだったのか。だが本作は祈る暇も無し。

★★80.人生劇場 飛車角と吉良常 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★81.夜の牝犬 @ラピュタ阿佐ヶ谷
82.荒野の渡世人 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★83.夜の歌謡シリーズ 長崎ブルース @ラピュタ阿佐ヶ谷

4月
84.サンタ・ビットリアの秘密 @新文芸坐
85.喜劇 初詣列車 @ラピュタ阿佐ヶ谷
86.赤い夜光虫 @ラピュタ阿佐ヶ谷
87.昭和最大の顔役 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★88.夜の手配師 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★89.歌え若人達 @神保町シアター
★★90.キネマの天地 @神保町シアター
> 山田洋次「キネマの天地」神保町。松竹が自社の作風に開き直ってみせる?映画。キミはこんな話で感動するの?こんな話で泣くの?と試されながら進む。泣いてたまるか。でも泣かされた。渥美清の役名が喜八、名前だけで号泣。松本幸四郎のチャラい城戸所長が最高。倍賞千恵子が美しすぎた。あー悔しい。

91.少年時代 @神保町シアター
92.花腐し @新文芸坐
93.藍より青く @神保町シアター
★94.惜春鳥 @神保町シアター
95.虹を掴む男 @シネマヴェーラ
> N.G.マクロード「虹を掴む男」ヴェーラ。
ナイトクラブの給仕の上着を借りてダニー・ケイ演ずるウォルターがバンドを伴い芸を見せる場面。
「チェコの作曲家アンドレ(以下、長い名前)の交響曲。これは非常に不利な条件で書かれた。——彼には才能が無かった」
自分のことかと思い、唯一笑った冗句。
> 「虹を掴む男」のダニー・ケイ。何かが起きても動じないが、数秒後に気がついて怯える、というリアクション芸。コレ、誰かの芸風に似てる、と思い、数秒後に思い出したのは谷啓。名前のまんま!だが容貌の全く異なるこの人を真似ようと考えた谷啓の方がずっとユニーク、ついつい贔屓してしまう。

★96.サッド・ヴァケイション @早稲田松竹
97.男度胸で勝負する @ラピュタ阿佐ヶ谷
98.博徒解散式 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★99.スリランカの愛と別れ @国立映画アーカイブ
> 婚約指輪を買ったのに失恋した青年を憐れむ栗原小巻に北大路欣也がいう台詞。
「胸に痛みを持つ方が、男は意地になって頑張るものです」
その栗原小巻は宝石の買付人。
「宝石ってこんなに美しいのに、どんな人間の心も美しくしないの」
木下恵介「スリランカの愛と別れ」NFAJ。宝石をめぐる物語。珍品。

100.この子を残して @神保町シアター
★★101.夕やけ雲 @神保町シアター
102.進め!ジャガーズ 敵前上陸 @ラピュタ阿佐ヶ谷
103.毒薬と老嬢 @シネマヴェーラ
★★★104.マエストロ : その音楽と愛と @新文芸坐
> 「きみはいずれアメリカ合衆国が生んだ最初の名指揮者になる。それには自らの人生も正確に指揮しなくてはならない。舞台やハリウッドの仕事はやめることだ。そして名前もレナード・バーンズに変えたまえ。誰もユダヤ人の指揮者を雇おうとは思わん」
「マエストロ:その音楽と愛と」新文芸坐。
> ブラッドリー・クーパー「マエストロ:その音楽と愛と」新文芸坐。輝かしいデビューと、パーティーの夜に将来の妻と出会う前半を観ながら思い出していたのは20代の頃に心酔していたポール・マザースキーの「グリニッチ・ビレッジの青春」という映画。ニューヨークの街と将来への畏れ。すでに涙腺決壊。
> 「マエストロ」もちろんバーンスタインは「グリニッチ・ビレッジの青春」の主人公とは違い音楽界の寵児となる。ケレンとかギミックという程ではない、チャーミングな映像と編集の魔法を駆使して輝かしいキャリアを登りつめる前半の描写はモノクロ。ところが人生の混沌に喘ぐ後半はカラーで描かれる。
> 「マエストロ」この辺りから本作は多くの観客に支持される様な話ではない、と分かる。心の赴くままに「やらかし」て、それを伴侶に見咎められる巨匠。これは誰かがオレに見せるためだけに作ったのか、と錯覚してしまう映画。さらにシャーリー・エリスの曲が流れて涙と鼻水が止まらず派手に咳き込んだ。
> 「マエストロ」我ながら不注意だが、エンドクレジットが出るまでこの映画が主演のブラッドリー・クーパー自らの演出だというのを失念して観ていた。しかもスコセッシとスピルバーグも製作に名を連ねる。「ハングオーバー!」でおバカな演技を見せた二枚目も芸術家の仲間入り。すこし淋しい。

105.花ひらく -眞知子より- @国立映画アーカイブ
★106.追跡 @シネマヴェーラ
★107.ビッグ・トレイル @シネマヴェーラ
108.バワリイ @シネマヴェーラ
★109.男の魂 @シネマヴェーラ
★110.限りなき追跡 @シネマヴェーラ
★111.あなたは….. @Morc阿佐ヶ谷
   日の丸 @Morc阿佐ヶ谷
112.人妻セカンドバージン 私を襲ってください @ラピュタ阿佐ヶ谷

5月
113.金髪乱れて @シネマヴェーラ
★114.夜の訪問者 @K’s シネマ
★115.殺られる @K’s シネマ
> E.モリナロ「殺られる」K’sシネマ。アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの音楽があまりに饒舌。フィリップ・クレイ演ずるとぼけた殺し屋は宍戸錠「エースの錠」キャラクター形成に大きな影響を与えたはず。人身売買の組織にひとり立ち向かう主人公を見てなぜかA首相を撃ったY容疑者を思う。

★116.ベラクルスの男 @K’s シネマ
★117.生き残ったものの掟 @K’s シネマ
★118.乗馬練習場 @K’s シネマ
★119.息子 @神保町シアター
★★120.噂の娘 @神保町シアター
> 老舗「灘屋酒店」の主人・御橋公は警察に連行されていくとき、先代の主人・汐見洋の耳元で「すみません」と謝罪する。すると先代は顔色を変えず答える。「いいさいいさ、なるようになっただけさ」
成瀬巳喜男「噂の娘」神保町シアター。再見。またしてもノックアウトされた。

★121.ぐるりのこと。 @新文芸坐
★122.うれしはずかし物語 @新文芸坐
★123.D坂の殺人事件 @新文芸坐
★124.私の彼氏 @シネマヴェーラ
125.ソルジャー・ブルー @新文芸坐
126.夢がいっぱい暴れん坊 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★127.人魚昇天 @シネマヴェーラ
128.俺の血は他人の血 @シネマヴェーラ
★129.情無用の罠 @シネマヴェーラ
130.日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群れ @シネマヴェーラ
★131.パンチ野郎 @シネマヴェーラ
★★132.春秋一刀流 @シネマヴェーラ
★133.君は海を見たか @シネマヴェーラ

6月
134.まらそん侍 @シネマヴェーラ
★135.美しい暦 @神保町シアター
> 森永健次郎「美しい暦」神保町シアター。未見だった吉永小百合主演作。先週の「いつでも夢を」はパスしたが、これは観てよかった。芦川いづみの映画、として考えたらかなり好みの作品かも。それより主人公のクラスメイトの眼鏡の女の子がどう見てもオレの好きなタイプ、と思って調べたら松岡きっこ!うわー大感激!

★136.夜の終り @国立映画アーカイブ
★137.高校生番長 @シネマヴェーラ
> あの「性犯罪法入門」の帯盛に増村イズムを、と怪しんでいたが、ドラマ演出の「スピード」と「圧」みたいなものからロケーションや撮影に至るまで、たしかに増村イズムが横溢していてびっくり!南美川洋子の美しさ。ピーターみたいなメイクの八並映子!「性犯罪法」もまた観たくなった。

138.東京べらんめえ娘 @ラピュタ阿佐ヶ谷
139.にっぽん美女物語 @ラピュタ阿佐ヶ谷
140.女医の愛欲日記 @ラピュタ阿佐ヶ谷
141.ブレイキング・ニュース @早稲田松竹
142.エグザイル/絆 @早稲田松竹
143.城市特警 @早稲田松竹
144.暗戦 デッドエンド @早稲田松竹
145.柔道龍虎房 @早稲田松竹
146.若い仲間たち うちら祇園の舞妓はん @シネマヴェーラ
147.頑張れ!日本男児 @シネマヴェーラ
148.処女かまきり @ラピュタ阿佐ヶ谷
149.江梨子 @シネマヴェーラ
150.ボクのおやじとぼく @シネマヴェーラ
151.剣光桜吹雪 @シネマヴェーラ
152.豚と金魚 @シネマヴェーラ
★153.帰ってきたあぶない刑事 @T-JOY品川
> 原廣利「帰ってきたあぶない刑事」T-JOY。主演コンビ、とりわけ柴田恭平の「老いっぷり」などと笑っていたが、観ているうちにセリフ回しの「軽さ」に感動!タカ&ユージはナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキン、あるいはロバート・カルプとビル・コスビーなのか。ラスト「黒澤満の思い出に」の弔辞も。

★154.死と処女 @シネマート新宿
> ロマン・ポランスキー「死と処女」シネマート新宿。登場人物が3人のみのサスペンス劇。この作家の映画、どれを観ても面白いし、巧みな語り口だし、セクシャルな事象を絡めた作劇はこの人ならでは、と思うが、自分にとって最重要な映画作家ではないのかも、と気付いた2時間弱。でも「反撥」は好きだったかな。

★★155.実録 白川和子 裸の履歴書 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 曽根中生「実録 白川和子 裸の履歴書」ラピュタ。完全にノックアウトされた。五條、高橋、織田、影山、男優たちの絶妙過ぎる配役。5社への反発と憧れを繰り返し唱えながら、しれっと「撮影所映画」「スター揃い踏み映画」にしてしまう笑いのセンス。何より主演女優の可愛さ、魅力的な声。
> 個人的には「㊙色情めす市場」よりも断然好きな映画だった。だのに、なぜ?こんな傑作をいままで観てなかったのかといえば、若い時オレが劣情を抱いて恵比寿や新橋なんかの成人向け3本立てに行くとき、白川和子や風間舞子の主演作はパスしていたから。これから追いかけます。
> それにしてもこの映画、自分も映画を作っている、とか、コレから何か作って世に出るんだ、と意気込んでいた人たちはホントにやられた!と思ったのでは。ラストの女優陣揃い踏みの見事なこと。ゴダールや「お荷物小荷物」の先にこんなに最高の映画があったとは。きょうから曽根中生を尊敬する。
> しかし。オレも大学卒業の年に「にっかつ」助監督試験を受けたんだよな。一緒に受けたのはクラスメイトの斉藤ひろし。その年は採用無しだったというが、斉藤くんはその後ディレカンの脚本公募に入選して映画の世界へ。この傑作を観ていなかったオレは音楽の世界に行って正解?だったのかも。つまり教養がなかった、ということ。
> 何を観ても自分の話になってしまうジジイの昔語りでした。

156.泥だらけの純情 @神保町シアター
★157.雨の中に消えて @神保町シアター
>三者三様の恋と挫折。ついに3人は同居を解消しようと話し合った矢先、そぼ降る雨の中、長い別れを告げる為に下宿に現れる吉永小百合の恋人・高橋英樹。それまでのにぎやかな物語が一転、物静かなムードに転調する終盤。西河克己の演出に感動した。

158.残酷・黒薔薇私刑 @ラピュタ阿佐ヶ谷
159.実録不良少女 姦 @ラピュタ阿佐ヶ谷
160.女教師 童貞狩り @ラピュタ阿佐ヶ谷
★161.トルコ110番 悶絶くらげ @ラピュタ阿佐ヶ谷
★162.人妻セックス地獄 @ラピュタ阿佐ヶ谷
163.赤い蕾と白い花 @神保町シアター
164.レスビアンの女王 続・桐かおる @ラピュタ阿佐ヶ谷
165.朝はダメよ @ラピュタ阿佐ヶ谷
166.性処女 ひと夏の経験 @ラピュタ阿佐ヶ谷
167.団鬼六 蛇の穴 @ラピュタ阿佐ヶ谷
168.女子大生失踪事件 熟れた匂い @ラピュタ阿佐ヶ谷

7月
169.団地妻 二人だけの夜 @ラピュタ阿佐ヶ谷
170.就職戦線異常なし @神保町シアター
★★171.大失恋。 @神保町シアター
172.ベル・エポック @神保町シアター
173.新・レスビアンの世界-陶酔- @ラピュタ阿佐ヶ谷
174.ジェラシー・ゲーム @ラピュタ阿佐ヶ谷
175.看護婦日記・獣じみた午後 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★176.史上最大のヒモ 濡れた砂丘 @ラピュタ阿佐ヶ谷
177.女医肉奴隷 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★178.エンジェル 僕の歌は君の歌 @神保町シアター
179.乳房 @神保町シアター
180.ラストソング @神保町シアター
181.のぞき @ラピュタ阿佐ヶ谷
182.女教師狩り @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 鈴木潤一「女教師狩り」ラピュタ阿佐ヶ谷。
海岸で焼き蛤を売る男。
「おい、今日はもう終わるぞ」
「え、もう終わり?テキ屋ってのは気楽な商売なんだね」
「気楽そうに見せるのがむずかしいんだ」
他にも印象に残るセリフがあったが、もう忘れた。

183.軽井沢夫人 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★184.団鬼六 女美容師縄飼育 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 本日のラピュタ「ロマン」4本立、最高ではないがどれも楽しんで観た。とくに最後の「女美容師」、山中貞雄の「百万両の壺」かよ?というほど効果的な省略の連続で驚く。団鬼六の原作を持つ映画で、これほどユーモアに満ちた作品があったとは。大好きな志麻いづみさんは「蒼いおんな」を凌ぐ美しさ。

185.アリスのレストラン @新文芸坐
186.フレンチドレッシング @神保町シアター
★187.新 居酒屋ゆうれい @神保町シアター
> 渡邊孝好「新 居酒屋ゆうれい」神保町。観ながら以前に観た映画の記憶が乱反射するような映画がいちばん好き。「異人たちの夏」「ツィゴイネルワイゼン」「生きている小平次」もちろん「兆治」。映画全体がとっ散らかりそうなのを舘ひろしの魅力で引っ張る。映画「また逢う日まで」の引用はトゥ・マッチでした。

★★188.蕾の眺め @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 田中登「蕾の眺め」ラピュタ。観たばかりで興奮してます。大傑作。大感動。フェリーニを超え、森崎東を超えたかも。加藤嘉が加藤嘉史上最高。草野大悟も最高。でも我らがピンキーがあまりにも最高で泣いた。こんなに素晴らしい女優だったとは。日本が世界に紹介すべきはこういう映画だと思ったりする。

★189.吹けよ春風 @神保町シアター
190.Lie lie Lie @神保町シアター
191.双子座の女 @ラピュタ阿佐ヶ谷
192.オーガズム真理子 @ラピュタ阿佐ヶ谷
193.芦屋令嬢 いけにえ @ラピュタ阿佐ヶ谷
194.女高生飼育 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★195.輪舞 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 小沼勝「輪舞」ラピュタ。開巻、バーテンダーが青空あきおで驚く。そしてダンディな老人、南利明。続いて現れた老紳士は日野道夫。名画座通いも10年、この俳優の名前がすぐに出るようになったのは良いことなのか。ロマンのみならず「ポルノ」度数にも満足。最高にオシャレな映画でした。

8月
★196.学校 @神保町シアター
197.ファイナル・スキャンダル 奥さまはお固いのがお好き @ラピュタ阿佐ヶ谷
★198.フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン @T-JOY品川
199.ずべ公番長 夢は夜ひらく @ラピュタ阿佐ヶ谷
★200.失はれた地平線 @シネマヴェーラ
★201.オペラハット @シネマヴェーラ
★202.たそがれの女 @シネマヴェーラ
203.花婿来たる @シネマヴェーラ
★204.希望の星 @シネマヴェーラ
★205.其の夜の真心 @シネマヴェーラ
★206.陽気な踊子 @シネマヴェーラ
★207.一日だけの淑女 @シネマヴェーラ
★208.関東おんな極道 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★209.妖艶毒婦伝 人斬りお勝 @ラピュタ阿佐ヶ谷
210.女番長ブルース 牝蜂の挑戦 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★211.幼き者は訴える @シネマヴェーラ
> 春原政久「幼き者は訴える」シネマヴェーラ。フランソワ・トリュフォーに4年先駆けて作られた「大人は判ってくれない」!なーんて話はだいぶ違うのだけど、ラスト近く、あれっ、と驚くほどあの映画が頭の中を掠めた。卑劣な老人を演じるときの加藤嘉は最高。

212.太陽とバラ @神保町シアター
> 昨日のつづき。こちらはクロード・シャブロルの「いとこ同志」に先駆けること3年、というような作品。この映画の石濱朗と中村賀津雄はまるでジャン・クロード・ブリアリとジェラール・ブラン。下敷きにしたのか、と思えば木下恵介の方が3年早かった。やはり昨日につづいて鉄道事故で終わる物語。

213.ずべ公番長 東京流れ者 @ラピュタ阿佐ヶ谷
214.女左膳 濡れ燕片手斬り @ラピュタ阿佐ヶ谷
215.女番長 @ラピュタ阿佐ヶ谷
216.太陽の恋人 アグネス・ラム @神保町シアター
> 神保町シアターのレイトショーで「太陽の恋人 アグネス•ラム」。いつもよりおしゃれな東映マークにニヤリとしたが、あとは週末の疲れが出たのか25分すっかり眠ってしまい、目を開けたらエンドロールが流れていた。。

217.妖艶毒婦伝 お勝凶状旅 @ラピュタ阿佐ヶ谷
218.緋牡丹博徒 お命いただきます @ラピュタ阿佐ヶ谷
219.女番長 感化院脱走 @ラピュタ阿佐ヶ谷
220.詩人の生涯 @シネマヴェーラ
★221.時の崖 @シネマヴェーラ
> 安部公房「時の崖」シネマヴェーラ。井川比佐志のひとり芝居。若く才能ある俳優にとってこんなにうれしい仕事が他にあるだろうか。今回の特集でも上映のあった勅使河原宏「白い朝」とかドナルド・リチー「熱海ブルース」みたいな短編をスクリーンで観ることの歓び。20世紀ってよかったなあ。

222.戦争を知らない子供たち @神保町シアター
> 松本正志「戦争を知らない子供たち」神保町。主演俳優たちが弱くて、まるで説得力のない凡作。だが見所や小ネタはいろいろと。冒頭の「panavision」のロゴ。広野勝のタイトル文字。原保美の歌うタイトル曲。そしてあの薫くん。。東芝のカレッジポップスは和製ダンヒル・サウンドだったと知る。

223.新婚道中記 @シネマヴェーラ
★224.死の谷 @シネマヴェーラ

9月
225.銀蝶渡り鳥 @ラピュタ阿佐ヶ谷
226.歩道の三人女 @シネマヴェーラ
227.殺人魔の魂 @シネマヴェーラ
228.動物園の殺人 @シネマヴェーラ
229.従業員通用口 @シネマヴェーラ
230.フィメール @シネマヴェーラ
★231.銀蝶流れ者 牝猫博奕 @ラピュタ阿佐ヶ谷
232.若い貴族たち 13階段のマキ @ラピュタ阿佐ヶ谷
233.前科おんな 殺し節 @ラピュタ阿佐ヶ谷
234.桜の森の満開の下 @神保町シアター

10月
235.白昼の通り魔 @ラピュタ阿佐ヶ谷
236.生きる歓び @新文芸坐
★237.ボルサリーノ @新文芸坐
238.さらば箱舟 @神保町シアター
239.死の棘 @神保町シアター
240.集団左遷 @ラピュタ阿佐ヶ谷
241.続・夕陽のガンマン 地獄の決斗 @新文芸坐
★242.ラ・カリファ @新文芸坐
★243.ヴィタール @新文芸坐
★★244.新・極道記者 逃げ馬伝説 @神保町シアター
> 望月六郎「新・極道記者 逃げ馬伝説」神保町シアター。最高だったけれどエンドロールで「企画 奥田瑛二」と出てちょっとムカつく。ナルシストめが!でも唐十郎が天使!そしてオレは博奕にのめり込む話が好きなんだと知る。映画も小説も。たぶん自分の人生の「いま」観たからこんなに感動したのかも。

245.カンゾー先生 @神保町シアター
★246.雪割草 @国立映画アーカイブ
> きょうNFAJで観た田坂具隆「雪割草」とても素晴らしかったが、最初から最後まで「アレ?この話知ってる」と思いながら観ていた。川崎敬三と、、あと誰だっけ、みたいな曖昧な記憶。調べてみたらこの映画だった。井上芳夫「扉を叩く子」。役名も同じく戸田勝彦。でもきょうの子役の伊庭輝夫さん、可愛かったです。

247.極東黒社会 @新文芸坐
248.にっぽん’69 セックス猟奇地帯 @神保町シアター
249.任侠外伝 玄界灘 @神保町シアター
250.ジャズ・オン・パレード1954年 東京シンデレラ娘 @シネマヴェーラ
> 何週間ぶり?のシネマヴェーラ。「東京シンデレラ」井上梅次ってこのモチーフで何本撮ったのか。作曲家と歌手の恋。落ちぶれた芸人と娘。何本も撮れてしまうのがスゴイが、撮る程に洗練されていくわけでもないのもスゴイ。ドラムスを叩く南廣。新倉美子の声。あの芸風で喜劇役者というロッパの貫禄。

251.カックン超特急 @シネマヴェーラ
252.激闘の地平線 @シネマヴェーラ
253.鶴亀先生 @シネマヴェーラ
254.アチャコ青春手帖 第四話 めでたく結婚の巻
> 井上梅次「アチャコ青春手帖 第四話 めでたく結婚の巻」ヴェーラ。これは「アチャコの吹けよ春風」なのか、と思って観ていたがやはり梅次の映画、後半にナイトクラブが登場。ショウビズへの憧れ以上に夜の社交界に強い興味を持つ人。いつもJ.H.クルーゾーを連想してしまう。悪役の益田喜頓!

255.青春ジャズ娘 @シネマヴェーラ
256.俺も男さ @シネマヴェーラ

11月
257.”わが名はペテン師”より 森繁のペテン王 @シネマヴェーラ
★★258.東京カチンカ娘 @シネマヴェーラ
> 毛利正樹「東京カチンカ娘」ヴェーラ。バロンと呼ばれ愛されるサンドイッチマンに古川緑波。その娘でモデルの折原啓子。若い作曲家・若原雅夫。彼が後押しするグループの暁テル子、内海突破、有木三太。そこに加わるギタリスト川田晴久。有閑マダムの市川春代。恋と音楽とご都合主義。愛すべき小品。

259.恐怖の弾痕 @シネマヴェーラ
260.惜春 @シネマヴェーラ
★261.緋牡丹記 @シネマヴェーラ
★★262.現代任侠史 @丸の内TOEI
> 「しあわせだったよ」
二代目を実子に譲り、組から退きカタギとなった高倉健が、弟分の成田三樹夫や仲裁人の安藤昇を殺され、ついに立ち上がるが、それを泣いて制止する婚約者の梶芽衣子を抱きしめてひとこと告げる別離の台詞。「現代任侠史」丸の内TOEI。オレの石井輝男ウィークはこの映画から。
> 石井輝男「現代任侠史」。使いたくない言葉を敢えて書くなら「メタ任侠映画」。やっぱり違うな。これは橋本忍と石井輝男が語る東映任侠もの。往時のアラン・ドロン主演のノワール作と呼応する何か。安藤昇、成田三樹夫、辰巳柳太郎らの意外なキャラクター造形。あの林彰太郎のアップと長台詞。
> 「現代任侠史」ゴルフ場のコテージで今井健二を射殺して屋外に逃げる郷鍈治を男たちが追うシーン。バルコニーを駆け抜けていく男たちが消えるまで映し撮る演出と編集になぜか鮮烈な「モダニズム」を感じた。月曜に観たのにいまだに余韻の残る、傑作ではないのに忘れ難い映画。

263.決着 @シネマヴェーラ
264.続決着 @シネマヴェーラ
265.ねじ式 @シネマヴェーラ
★266.パリでかくれんぼ @早稲田松竹
267.経験 @ラピュタ阿佐ヶ谷
268.狼やくざ 葬いは俺が出す @ラピュタ阿佐ヶ谷

12月
269.大地の侍 @シネマヴェーラ
270.命美わし @シネマヴェーラ
★271.偽れる盛装 @シネマヴェーラ
★★272.青雲やくざ @シネマヴェーラ
> 梅津明治郎「青雲やくざ」ヴェーラ。本家「007」に対して「ナポレオンソロ」や「それゆけスマート」は「スパイ・スプーフ」と呼ばれたが、これは「任侠スプーフ」にして「若大将スプーフ」?でもパロディではないし。素晴らしいキャスティング、小気味良い竹脇無我の台詞。最高の娯楽映画を観ました。

273.関東テキヤ一家 喧嘩火祭り @ラピュタ阿佐ヶ谷
274.不良番長 やらずぶったくり @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★275.集団奉行所破り @シネマヴェーラ
> 長谷川安人「集団奉行所破り」ヴェーラ。3度目。今回も★★。3度目なのにまたしても佐藤慶の芝居に騙され泣かされる。「すぼけ」とはオレのことかいな。脚本家・小国英雄の市井の人々への眼差し。こんなに素晴らしい映画がときどき掛かる名画座のある街に住む幸福を思う。これはオレのお正月映画。
> 「集団奉行所破り」この映画のクラシックギターをメインにした寂しいアンサンブル。加藤泰監督、大川橋蔵主演、林光の「幕末残酷物語」や、成澤昌茂「四畳半物語・娼婦しの」もたしかこんな音楽。かつてはクラシックギター1本の音楽を聴くと、予算が足りない?と考えたが、どうもそうではないらしい。
> 「集団奉行所破り」この映画が素晴らしくて、「いのちぼうにふろう」はどうしてああなのかを考える。どうもオレは予算も芸術的野心もたっぷりの「大作」なんかより、小ぢんまりとスケールの小さい娯楽作品の方が好きらしい。

★276.時代屋の女房 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★277.東シナ海 @シネマヴェーラ
> 磯見忠彦「東シナ海」ヴェーラ。みな変な映画と書いているが、自分は大いに楽しんだ。日活のマークが出たのに松竹を思わせる作風。「日本ゲリラ時代」「帰ってきたヨッパライ」、ジャガーズはじめ数多のGS映画、新藤兼人の船の映画、「ソナチネ」など多くの映画を連想。今年の女優賞は賀川雪絵に決定!

278.仇討崇禅寺馬場 @神保町シアター
279.権九郎旅日記 @シネマヴェーラ
280.ガリバーの宇宙旅行 @神保町シアター
281.一杯のかけそば @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★282.人情紙風船 @早稲田松竹
★★283.三十三間堂通し矢物語 @早稲田松竹
> ラピュタで「一杯のかけそば」、早稲田松竹で山中貞雄「人情紙風船」と成瀬巳喜男「三十三間堂通し矢物語」。どれも楽しんだ。「紙風船」のレストア版の驚くほどの美しさ。「通し矢」はいつもの成瀬と全く違うが傑作。黒澤明が成瀬を尊敬していた、というのが理解できた。古い日本映画って最高、と心から思う。

284.ヒトラーの殺人 @シネマヴェーラ
★285.僕の彼女はどこ? @シネマヴェーラ
286.社会の柱 @シネマヴェーラ
★287.エイプリル・フール @シネマヴェーラ



 ここまでの鑑賞リストを見て気づいたことがある。★1つ、は気に入った映画。★2つは大いに気に入った映画。そして何も付けていないのは、ただ観ただけの、とくに印象に残らなかった映画、というつもりでこのリストを記していたけれども、これは映画の出来不出来、あるいは特集のセレクションの良し悪しとかではない、こちらの気分の、体調の、塞ぎの虫の御機嫌の良し悪しの推移なのだ、ということに気づいた。2024年はじぶんの仕事のことや、個人的なことで映画を観ていてもすっかりうわのそらとなっている時期が長かった。新作映画を全然観るチャンスがなかった、と悔やんでもいたが、じつはそうではなくて、にぎやかな繁華街・歓楽街の真ん中で派手にロードショー公開をしている映画を観に行く気分になれなかっただけだ、とも気づく。2024年はいろいろなことにすっかり振り回された。

 年末にシネマヴェーラ渋谷の受付で『されど魔窟の映画館 浅草最後の映写』という本を購入した。著者はシネマヴェーラの映写技師である荒島晃宏さん。表紙と文中の挿画は山本アマネさん。ちくま文庫から発売された書き下ろしの一冊。
 じぶんはもう読書という時間を、移動中の乗り物の中と病院の待合室でしか持つことがないので、まだ読み終わっていないが、その本の66ページにこんな文章があったので、いささか長いけれども書き写す。




 別に傲岸不遜なことを言うつもりはない。わたくしがこれまで教わってきた、そして実行しようとしている映写は、極々当たり前のことを当たり前にやろうとしているだけだ。
 少なくともわたくしはそう思っている。
 例えば、フィルムを汚さない。上映出来るフィルムのコマを落とさない。傷んだ古いフィルムでも、可能な限り1コマでも長く上映する。映画の長さを故意に短くしたりしない。大まかにいって小さい方から、スタンダード(SD)、ビスタ(VV)、シネマスコープ(CS)の三種類ある上映サイズを正しく映す。与えられた設備で最大限に良い音で上映する。フォーカスには絶えず気を配る。開映毎に客席内で、フォーカスと音のレベルをチェックする。
 フィルム切れなどの映写事故で中断した場合は、場内を暗いままにしない。ちゃんとお客さんに事故を告知する。上映再開の際は、思い出せるところまで戻してからスタートする。そして終わった時は、お詫びのアナウンスを入れる。
 これらすべて、映写として最初に働いた大井武蔵野館で教わったことであると同時に、わたくしが客の立場なら、こうして欲しいと思うことだった。




 なんとフィルムに対して、観客に対して、仕事に対して、そして映画に対して敬意に満ちた言葉なのだろう。こういう映写があるからこそ、じぶんは劇場の暗闇の中で、ただ漫然と時間を過ごすことができるのだろう。とはいえ今年はもうすこし映画の「おはなし」に没入できるとよいのだが。

 『されど魔窟の映画館 浅草最後の映写』という本、シネマヴェーラ渋谷で買うと著者・荒島晃宏さんがサインを入れてくださいます。


イラスト / 山本アマネ