映画メモ・2023

 去年、とくに去年の後半は音楽とレコードのことばかり考えていた。あんたはいつもレコードのことばかり考えているじゃないか、と言われたらその通りだが、ここ何年か好きな音楽、好きなレコードがほぼ中学・高校時代と同じになってきて、それはどういうことなのか、やはり退行しているのだろうか、というようなことを考えている。退行しているのも、あるいは音楽の好みにかんして、ずいぶんと回り道してきたことも、それほど残念なことだとは思っていない。それは、ただの開き直り、かもしれないが。

 こうして一年に一度、映画の鑑賞リストを掲載させていただいているが、こうしてここに随想のようなものを書くのがなにかもどかしい。普段からなんにも考えていないから、というわけではなくて、いつもなにか、四六時中あれこれと考えているのだが、それはなにかひとつの結論にたどりつくようなものではないからで、けれどもそれはやはり、なんにも考えていないのと同じなのだろう。

 あれこれ考えているのに、いつまでたっても結論にたどりつかないこと。何度聴いても飽きのこない音楽。何度話しても、いつもそれを忘れて同じ相手に話してしまう同じ話。何度聞いても、さっぱりわからない話。何度注意されても、またくりかえしてしまう愚かな行為。

 映画館で映画を観るのが好きなのは、観ているとその間だけ、そうした頭の中のノイズを忘れることができるからなのかもしれない。ときおり、スクリーンを観てはいるもののまったく集中できない映画というのもあって、そんなときは暗闇の中でノイズと向き合うことになるけれども、それも悪くない。暗闇の中、ひとときじぶんの頭の中のノイズと向き合うために、劇場にやってくる。そう考えたら、いつも行く映画館の受付が銭湯の番台のように思えてくる。この連想はつい先週、クリスマスの日に観た、ある新作映画がまだ頭の片隅に残っているからだろうか。なにかヘンなものを食べて、べつに蕁麻疹が出たりしたわけではないけれど、なにか違和感がずっと残る感覚。その映画をはやく忘れるには、また次の映画を観るしかない。



1月
1.男の顔は履歴書 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★2.男の紋章 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 松尾昭典「男の紋章」ラピュタ阿佐ヶ谷。楽しみにしていた1本。今年の映画初めはコレ、と決めていて、火曜の夕方に劇場の窓口に向かったら今週だけ火曜からプログラムが変わってこの作品は午後の1本目に掛かっていた。けっきょく今年の映画初めは加藤泰×安藤昇「男の顔は履歴書」になってしまった。
> 「男の紋章」どうしてこの映画をこんなにも楽しみにしていたか、というと、たしか小学5年生の冬休み、帰省した札幌の両親の家で、年末年始の深夜TV映画としてこの高橋英樹と轟夕起子の「紋章」シリーズ?を続けて放映していたから。たぶんこのシリーズこそが、自分にとって初めての「旧作日本映画」
> 「男の紋章」子供心に強く印象に残っていたのは高橋英樹が医師を目指していた、という設定と轟夕起子の女親分のこと。言い換えるなら憶えていたのはそれだけ。でも大坂志郎も石山健二郎も井上昭文も杉江弘も武藤章生も木浦佑三も河上信夫もこの時に観ていたんだな、という感慨。
> そんな「男の紋章」、なぜかこの10年、ラピュタ阿佐ヶ谷でも新文芸坐でもシネマヴェーラでも神保町シアターでも掛からなくて、全然評価されていないシリーズなのかな、と思っていたところ。きょう、ようやく再会することができて満足。悪くない、全然悪くない任侠映画だった。感想なんて書けません。

3.昭和残俠伝 唐獅子牡丹 @ラピュタ阿佐ヶ谷
4.泣き濡れた春の女よ @早稲田松竹
5.情婦マノン @シネマヴェーラ
★6.永遠のガビー @シネマヴェーラ
★7.エストラパード街 @シネマヴェーラ
8.クレージーの殴り込み清水港 @ラピュタ阿佐ヶ谷
9.終末の探偵 @新文芸坐
10.獲物の分け前 @シネリーブル池袋
★11.河 @シネマヴェーラ
12.この空は君のもの @シネマヴェーラ
13.不思議なヴィクトル氏 @シネマヴェーラ
★14.侠花列伝 襲名賭博 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 小澤啓一「侠花列伝 襲名賭博」ラピュタ阿佐ヶ谷。煩いくらいアイデアに溢れた木村威夫の美術。三番勝負の場面のセリフに付けたリヴァーブ。「無頼」シリーズよりずっと美しく輝く松原智恵子。泣かせてくれるイイ女・梶芽衣子。でも最大の発見は植村謙二郎を「美しい」俳優と認識したこと。大満足。

15.嵐来たり去る @ラピュタ阿佐ヶ谷
★16.男の顔は切り札 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★17.友情 @神保町シアター
18.喜劇 団地親分 @神保町シアター
19.獣人雪男 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★20.女の賭場 @ラピュタ阿佐ヶ谷
21.赤い手のグッピー @シネマヴェーラ
22.毒薬 @シネマヴェーラ
23.ブギーナイツ @早稲田松竹
24.ランジュ氏の犯罪 @シネマヴェーラ
25.魅せられて @シネマヴェーラ
26.僕はボデイガード @神保町シアター
27.喜劇・爬虫類 @神保町シアター
★★28.曳き舟 @シネマヴェーラ
★29.トットチャンネル @新文芸坐
30.黄金の馬車 @シネマヴェーラ
★★★31.偽れる装い @シネマヴェーラ
> ジャック・ベッケル「偽れる装い」シネマヴェーラ。素晴らし過ぎて、凄すぎて、感想がまとまらない。まるで登場人物の心の動きそのままのスピードで進行するような語り口。映画って周到な準備がなくては作ることが出来ないのに。ノックアウトされてしまった。★★★

★32.遊侠三国志 鉄火の花道 @ラピュタ阿佐ヶ谷
33.東京博徒 @ラピュタ阿佐ヶ谷
34.血斗 @ラピュタ阿佐ヶ谷
35.透明人間と蠅男 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★36.あゝ声なき友 @神保町シアター
★37.男はつらいよ フーテンの寅 @神保町シアター
★38.鏡の中にある如く @新文芸坐
39.鏡の中の女 @新文芸坐

2月
40.兄弟仁義 逆縁の盃 @ラピュタ阿佐ヶ谷
41.地獄の破門状 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★42.美女と液体人間 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 本田猪四郎「美女と液体人間」ラピュタ。初めて観た。いやー、こんなに面白い、こんなに楽しい映画だったなんて!まさに東宝オールスター!河美智子さん、キャバレーの踊り子でした?本末転倒なことを言えば庵野秀明「シンゴジラ」な記号もふんだんに。観終わって寒空はだかさんに親指を立てて黙礼!

★43.ニコヨン物語 @シネマヴェーラ
44.夜霧の訪問者 @シネマヴェーラ
★45.人間標的 @シネマヴェーラ
★46.十七才の抵抗 @シネマヴェーラ
47.未成年 @シネマヴェーラ
48.サン・ソレイユ @目黒シネマ
49.ラ・ジュテ @目黒シネマ
  シベリアからの手紙 @目黒シネマ
50.猿飛佐助 @シネマヴェーラ
★51.女渡世人 @ラピュタ阿佐ヶ谷
52.姐御 @ラピュタ阿佐ヶ谷
53.太陽を抱け @シネマヴェーラ
★54.群衆の中の太陽 @シネマヴェーラ
> 昭和40年代の旧作日本映画を観てきて思ったこと。安部徹とか天津敏とか、ふだん悪役を演じている俳優が好人物を演じている映画は、たいていの場合、当たり。この映画では柳瀬志郎までもが好人物の役だった。

55.明日は明日の風が吹く @シネマヴェーラ
> 開巻して間もなく大坂志郎に刺される小林重四郎は井上梅次のご贔屓なのか。その大坂志郎が18年の刑期を務めて木場に戻って代貸しの植村謙二郎と会話する長いシーンが素晴らしい。けれどその後は、、少し映画が長すぎた。

56.怒れ毒蛇 目撃者を消せ @シネマヴェーラ
★57.悪魔の街 @シネマヴェーラ
> 鈴木清太郎「悪魔の街」ヴェーラ。期待せずに観てぶっ飛ばされた。まるでヴェーラで特集上映される50年代のフィルムノワール。主役・河津清三郎の恋人に全く喋らせない演出。菅井一郎の身体能力に驚く。ラストの石油精製工場はまるで「白熱」。これほど巧い職人が十年後に「殺しの烙印」を作るなんて。
> そういえば、この映画に出てくる柳瀬志郎が、他の登場人物から「おい、マンボ」と呼ばれる場面を観た。

58.無鉄砲大将 @シネマヴェーラ
59.日本一短い母への手紙 @神保町シアター
60.17才〜旅立ちのふたり @神保町シアター
61.愛妻くんこんばんは ある決闘 @シネマヴェーラ
  結婚 陣内・原田御両家篇 @シネマヴェーラ
62.まわり道 @目黒シネマ
63.海峡、血に染めて @シネマヴェーラ

3月
★★64.ハイティーンやくざ @シネマヴェーラ
> この柳瀬志郎の電気屋の、一瞬のシーンの素晴らしさ。「ハイティーンやくざ」オレは完全にノックアウトされた。最高の映画だった。感想ツイートを読んでいると、みんなもっと褒めてくれよ、って思ってしまう。余計なお世話ですね。誰もわかってくれないなんて、とってもアクション・ペインティングな。
> 鈴木清順「ハイティーンやくざ」ヴェーラ。「刺青一代」で衝撃を受けた20代のオレはこの作家の「ヘン」な、「アングラ」な部分ばかり追いかけていた。それがこの10年の映画鑑賞で「端正な」映画も巧い人だと再認識。でもやっぱりこの人は!何だろ、この強烈な体臭。この独特の泥臭さ。最高の映画体験!

★65.東京騎士隊 @シネマヴェーラ
66.帆網は唄う 海の純情 @シネマヴェーラ
★★67.刺青一代 @シネマヴェーラ
68.悲愁物語 @シネマヴェーラ
69.くたばれ愚連隊 @シネマヴェーラ
70.弘高青春物語 @シネマヴェーラ
> 鈴木清順「弘高青春物語」シネマヴェーラ。あれほど傑作を遺した作家がどうしてこんな作品を作るのか。目先の金銭のため?しがらみ?それとも頼まれると嬉しくて引き受けてしまうのがモノを作る人間の習性なのか。老けているのに若い玉川伊佐男が誰かに似ているのに判らず終い。調べたら81歳、最晩年!
> 清順「弘高青春物語」観なくてもよかったが、それはそれで後悔したはず。きょう、目先の金銭のために引き受けた仕事が想像のはるか上を行く改変、改竄に遭って映画を観ながらその事ばかり考える。断固として抗議するべきか、降りるか、鈴木清順よろしく涼しい顔で自作として発表するのが大人なのか。

71.日本一のゴマすり男 @新文芸坐
72.クレージーの怪盗ジバコ @新文芸坐
★73.フェイブルマンズ @T-JOY品川
> スティーヴン・スピルバーグ「フェイブルマンズ」T-JOY品川。とても良かった。ヘヴィな話を重くない語り口で描く。ひじょうに口はばったい、厚かましい、驕ったことを言うが、これは完全に自分のような人間へのメッセージとして受け取った。オレはスピルバーグのように天才でも成功者でもないけれど。

★74.彼らは9人の独身男だった @シネマヴェーラ
★75.カドリーユ @シネマヴェーラ
★76.夢を見ましょう @シネマヴェーラ
★77.役者 @シネマヴェーラ
> 「俳優は何も残せない。だから人生を謳歌する」
サッシャ・ギトリ「役者」主人公である役者のドレッシング・ルームに飾られている過去の名優の肖像画に添えられた言葉。

★78.幸運を! @シネマヴェーラ
79.二羽の鳩 @シネマヴェーラ
80.祖国の人々 @シネマヴェーラ
81.王冠の真珠 @シネマヴェーラ
★82.デジレ @シネマヴェーラ
83.シャンゼリゼをさかのぼろう @シネマヴェーラ
★84.シン・仮面ライダー @T-JOY品川
85.笑う宝船 @ラピュタ阿佐ヶ谷
86.追ひつ追はれつ @ラピュタ阿佐ヶ谷
87.女優と名探偵 @ラピュタ阿佐ヶ谷
88.追跡者 @ラピュタ阿佐ヶ谷
89.美しい人 @シネマヴェーラ
★★90.森繁よ何処へ行く @シネマヴェーラ
> 瑞穂春海「森繁よ何処へ行く」ヴェーラ。映画で好きなのは誰かと誰かが一瞬にして恋に落ちる、あるいは出会って次の場面ではもうカップルになっている、というアレ。この映画の森繁と杉葉子。そこで泣いてしまって、あとはお決まりの展開でもOK。終盤のメリーゴーラウンドも。いま発見された名作。
> 「森繁よ何処へ行く」とつぜん現れていきなり女を殴り、抱きしめて接吻する若原雅夫の服装が、あの大好きな宇野重吉「真夜中の顔」とまるで同じだった。それにしてもこの映画こそ、ニュープリントで観たい。
> 書き忘れてた!この映画で最高なのが、斎藤達雄が杉葉子と森繁を引き合わせるレストランの給仕・北澤彪。この人の存在が映画を最高に洗練されたものにしている。ずっと北澤彪と増田順二の区別が付かなかったオレは清水将夫と三津田健が似てると仰ってた「のむみち」さんを笑えない、、

91.奥様は大学生 @シネマヴェーラ
92.君と行くアメリカ航路 @シネマヴェーラ
93.翼は心につけて @シネマヴェーラ
★94.色暦女浮世絵師 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★95.流轉 @シネマヴェーラ
★★96.姫君と浪人 @シネマヴェーラ
> 志村敏夫「姫君と浪人」ヴェーラ。茫洋とした堀雄二が姫君を覗き見ただけで一目惚れしてしまう。「ピストン野郎」のベルモンドとドヌーヴ!? そして長屋の食い詰め浪人たち五人衆と芸事の師匠・高杉早苗はまるで江戸のボヘミアン。侠気とユーモア。これぞ山中貞雄イズム!残念な部分には片目を瞑る。

★97.森繁よ何処へ行く @シネマヴェーラ
98.上海帰りのリル @シネマヴェーラ
99.しあわせはどこに @神保町シアター
> 西川克己「しあわせはどこに」神保町シアター。あまり好きな映画ではなかったけれど、葉山良二の盛り蕎麦の美しい食べ方に感動した。箸で掴める最大積載量の蕎麦をつかんで蕎麦猪口に投入、蕎麦つゆに浸した部分はほとんど少ないはずだが、かまわず豪快にすすり込む。男ならこうありたい。

4月
100.Winny @TOHOシネマズ六本木
★101.花吹く風 @ラピュタ阿佐ヶ谷
102.伴奏者 @早稲田松竹
★103.幽霊繁盛記 @シネマヴェーラ
★104.明日はどっちだ @シネマヴェーラ
105.嵐の中の男 @シネマヴェーラ
★106.いらっしゃいませ @シネマヴェーラ
★107.暁の合唱 @シネマヴェーラ
> 枝川弘「暁の合唱」ヴェーラ。やはり清水宏と比べてしまう。でも全然違う話とも言える。香川京子のアイドル映画と考えるなら大成功。でも清水宏版の近衛敏明が好みだったんだよな、とか、木暮三千代よりは適役だよな、とか、けっきょく全編に亘って清水宏のことを思い出す佳作。

★★108.わが町 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★109.こんな私じゃなかったに @ラピュタ阿佐ヶ谷
★110.AIR / エア @T-JOY品川
★111.艶説お富与三郎 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★112.ピアノ・レッスン @目黒シネマ
113.青いパパイヤの香り @目黒シネマ
★114.小さな花の物語 @神保町シアター
> 神保町シアター、本日12時の回。上映が始まると昭和13年の東宝マーク。次に「泣虫小僧」のタイトルが出て、思わず「えっ!」と声が出てしまう。だが客席は静まり返っている。しまった、間違えたか。お目当ての映画を観る時間をどうやって作ろうかと考えた矢先、客電が灯りお詫びのアナウンスが。

115.柿の木のある家 @神保町シアター
★★116.手さぐりの青春 @神保町シアター
★★117.稲妻 @神保町シアター
> 今週、神保町シアターで観た2本の松竹映画、川頭義郎「手さぐりの青春」と大庭秀雄「稲妻」が本当に良かった。どちらもTVのホームドラマと何が違うの、という題材で、当時こうした映画をわざわざ劇場に行って観たのはどんな人たちだったのかと考えたり。でもやっぱり観終わると見事に映画だった。

118.かっこいい若者たち @ラピュタ阿佐ヶ谷
119.情炎お七恋唄 @ラピュタ阿佐ヶ谷

5月
★120.稲妻 @神保町シアター
> こちらは成瀬巳喜男版。何十年ぶりかで鑑賞。

121.希望の乙女 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★122.嵐を呼ぶ友情 @ラピュタ阿佐ヶ谷
123.性談 牡丹灯籠 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★124.パンチドランク・ラブ @新文芸坐
★125.星の瞳をもつ男 @ラピュタ阿佐ヶ谷
126.戦国ロック 疾風の女たち @ラピュタ阿佐ヶ谷
★127.暖流 @ラピュタ阿佐ヶ谷
128.ロマンス祭 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★129.体当たりすれすれ娘 @ラピュタ阿佐ヶ谷
130.腰抜け二刀流 @神保町シアター
★131.人類の戦士 @シネマヴェーラ
132.わが古城の町 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★133.誉れの一番乗 @シネマヴェーラ
134.黒時計連隊 @シネマヴェーラ
135.最後の一人 @シネマヴェーラ
★136.四人の復讐 @シネマヴェーラ
★137.河上の別荘 @シネマヴェーラ
★138.青春ア・ゴーゴー @ラピュタ阿佐ヶ谷
139.鋤と星 @シネマヴェーラ
140.世界は動く @シネマヴェーラ
>ステピン・フェチットと、たこ八郎。似ている。芸風が。

★141.花の宴 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> ラピュタで観た瀧廉太郎の伝記映画?「花の宴」傑作でも何でもないがオレには刺さった。誰も演奏を聴かないことに憤慨した廉太郎を連弾に誘う香山美子が弾くのは彼の作った「花」場内は大合唱!こんなの観て感激しない作曲家がいますか?脚本に斎藤耕一で主演が中山仁。村松英子の美貌!
> 深夜、廉太郎の部屋を訪れた香山美子が土井晩翠の詩を見せ、あなたが曲を付けてください、と頼む場面。天才プロデューサーがアーティストに最高の企画をオファーする瞬間。音楽家と恋愛、という通俗的なテーマ。市村泰一の切れ味の悪い演出でよかった。観ながらケン・ラッセルのことを考えた。

★★142.栄光何するものぞ @シネマヴェーラ
> ジョン・フォード「栄光何するものぞ」ヴェーラ。最も好みのタイプの映画。1952年の映画なのに、なぜかサム・ペキンパーの「砂漠の流れ者」やロバート・アルトマン「マッシュ」のような語り口やテンポが画面から表れて戸惑う。大学の頃、いつも映画の話をしていた友人を思い出して泣く。大傑作。

★★143.ウィリーが凱旋するとき @シネマヴェーラ
★144.豹/ジャガー @新文芸坐
145.四匹の蝿 @新文芸坐
> ダリオ・アルジェント「四匹の蝿」新文芸坐。全く楽しめず。とはいえオルガンバーのDJならご存知のエッダ・デル・オルソの過呼吸ぎみのスキャットを従えたエンニオ・モリコーネのボッサふうラウンジ音楽をじっさいの映画の中で初めて聴いたのは収穫。不労所得で暮らす役ばかりのミムジー・ファーマー。

★146.抜き射ち二挺拳銃 @シネマヴェーラ
★★147.ベツレヘムの星 @シネマヴェーラ
> この映画が本っ当に良かった!おじいちゃんボロ泣き。たった22分の大傑作にしてデビュー作!映画もDJも弾き語りも、けっきょく「語り口」。

148.ヒットラーは死なない @シネマヴェーラ
★149.アイ・ジョージ物語 太陽の子 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> ラピュタ阿佐ヶ谷で「アイ・ジョージ物語 太陽の子」評判通りの傑作。この人をはじめ坂本スミ子、ペギー・マーチ「コンニチワ・サヨナラ」の伴奏で知られる古谷充とフレッシュメン、そのピアニストで田宮二郎の映画の音楽を手掛けた大塚善章らがいたアロー音楽事務所の母体がナイトクラブだと知る。
> 関西では、それ常識でしょ、ってお話なのでしょうか。たぶん映画の中で西村晃が演じていたのが社長さん?それにしてもアイ・ジョージ以上にトリオ・ロス・パンチョスの「さくらさくら」が素晴らしかった。完璧な編曲、完璧なコーラスと演奏。ラウンジアクトの最高峰。ちゃんと聴かなきゃですね。反省。

★150.空いっぱいの涙 @ラピュタ阿佐ヶ谷
151.遥かなる国の歌 @ラピュタ阿佐ヶ谷

6月
152.さらば冬のかもめ @早稲田松竹
153.ウディ・ガスリー わが心のふるさと @早稲田松竹
154.ハロルドとモード @早稲田松竹
155.殺し屋ネルソン @シネマヴェーラ
156.暗闇の秘密 @シネマヴェーラ
157.ビッグ・ボウの殺人 @シネマヴェーラ
★★158.ロング・グッドバイ @角川シネマ有楽町
159.イメージス @角川シネマ有楽町
160.雨にぬれた舗道 @角川シネマ有楽町
161.果てしなき情熱 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 昨日ご覧になった諸先輩の感想ツイートに戦慄してパスしようかと考えたが、折しも服部良一関連の企画の話が来たので恐る恐る鑑賞。あの作曲家の音楽からこの様な世界を創出した和田夏十と市川崑に驚くばかり。それともオレにはハットリくんの音楽がわかっていないのか。怪作。アホかいな!

162.仮面の報酬 @シネマヴェーラ
163.ある詐話師の物語 猫に鰹節 @神保町シアター
164.サラトガ本線 @シネマヴェーラ
165.北部への追撃 @シネマヴェーラ
166.ルナ・パパ @ユーロスペース
★★167.鉄腕ジム @シネマヴェーラ
> ラウール・ウォルシュ「鉄腕ジム」ヴェーラ。蓮實重彦の著作の中でその名を知ってから40年、ようやく鑑賞。こんなに面白い映画だったとは。大好きなウォード・ボンドが大きな役。この人はアメリカの山本鱗一だと気づいた。でも山本鱗一が日本のウォード・ボンドかどうかはちょっとわからない。

168.太陽に突っ走れ @ラピュタ阿佐ヶ谷
169.恋する年ごろ @ラピュタ阿佐ヶ谷
170.愛は惜しみなく @ラピュタ阿佐ヶ谷
★171.夜までドライブ @シネマヴェーラ
172.復讐!反ナチ地下組織 @シネマヴェーラ
★173.暗黒の鉄格子 @シネマヴェーラ
★174.贅沢は素敵だ @シネマヴェーラ
175.純情二重奏 @ラピュタ阿佐ヶ谷
176.東京ナイト @ラピュタ阿佐ヶ谷
177.夢で逢いましょ @ラピュタ阿佐ヶ谷
178.白馬城の花嫁 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★179.いれずみ半太郎 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★180.夜霧よ今夜も有難う @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★181.カード・カウンター @ヒューマントラストシネマ渋谷
★182.世紀は笑ふ @ユーロライヴ
★183.若様やくざ 江戸っ子天狗 @ラピュタ阿佐ヶ谷
184.日本女侠伝 侠客芸者 @ラピュタ阿佐ヶ谷
185.産業スパイ @ラピュタ阿佐ヶ谷
★186.必殺仕掛人 第21話 地獄花 @ラピュタ阿佐ヶ谷

7月
187.悪名幟 @神保町シアター
188.股旅 三人やくざ @ラピュタ阿佐ヶ谷
189.てなもんや三度笠 @ラピュタ阿佐ヶ谷
190.樹氷のよろめき @シネマヴェーラ
> 吉田喜重「樹氷のよろめき」ヴェーラ。観ていて思い出したのは吉村公三郎「甘い秘密」。撮影所出身の力のある監督が、良い女優と男優そして良いロケーションが揃ってオレのセンスがあれば低予算でも1本撮れる、と考えた映画。それを感知した池野成はどちらの作品にも通俗的な音楽を書く。みたいな。

191.さらば夏の光 @シネマヴェーラ
> 吉田喜重「さらば夏の光」ヴェーラ。コレは観ていて苦痛だった。昔ながらの通俗的メロドラマを最新流行の演出と海外ロケで撮ると、みたいなヤツ。オレのやっていたバンドの90年代半ば、もうマンネリして煮詰まっていた時代の作品を思い出してツラくなりました。海外ロケのダメ映画の系譜、の金字塔。

192.RUDEBOY @イメージフォーラム 試写
193.情炎 @シネマヴェーラ
> 吉田喜重「情炎」ヴェーラ。蔵原惟繕「執炎」と混同して見逃すところ。男女の抱擁に重なる無調音楽。なんと通俗的な使い方、と池野成が考えたかどうか。そして鑑賞中、むかし作った「ベリッシマ」というアルバムを思い出す。なぜか音楽のことを考える映画。この作家の良い観客にはなれないらしい。

194.ボクサー @神保町シアター
195.友よ、静かに瞑れ @神保町シアター
★196.日本侠客伝 雷門の決斗 @ラピュタ阿佐ヶ谷
197.追いつめる @ラピュタ阿佐ヶ谷
> ラピュタ阿佐ヶ谷でマキノ雅弘「日本侠客伝 雷門の決斗」と舛田利雄「追いつめる」。どちらの映画も観ている間、きのうSNSで見た「ご縁とご恩」という言葉が頭に浮かんで、、集中できないじゃないの。「雷門」ロミ山田の素晴らしさを初めて認識する。「追いつめる」柳瀬志郎の名場面だけは最高。

198.トラック野郎 度胸一番星 @神保町シアター
★199.傷だらけの天使 @神保町シアター
> 井上堯之バンドの音楽の強さ。こんなに独自のサウンドを持つ音楽家だったとは。兄貴、とは言わないものの、それ以外は強く水谷豊に寄せている真木蔵人。あまりノレない映画、と思いながら観ていたが菅原文太の登場で引き込まれた。ずるい。脚本・丸山昇一。監督・阪本順治。

200.まむしの兄弟 刑務所暮らし四年半 @ラピュタ阿佐ヶ谷
201.葉蔭の露 @ラピュタ阿佐ヶ谷
202.柳生一族の陰謀 @ラピュタ阿佐ヶ谷
203.日本女侠伝 血斗乱れ花 @ラピュタ阿佐ヶ谷
204.唐獅子警察 @ラピュタ阿佐ヶ谷
205.バートン・フィンク @目黒シネマ
★206.ビッグ・リボウスキ @目黒シネマ
207.君たちはどう生きるか @T-JOY 品川
208.居酒屋兆治 @神保町シアター
★209.望郷子守唄 @ラピュタ阿佐ヶ谷
210.博奕打ち外伝 @ラピュタ阿佐ヶ谷
211.戦火のかなた @シネマヴェーラ
★212.殺人カメラ @シネマヴェーラ
213.白い船 @シネマヴェーラ
214.欲望 @シネマヴェーラ
★215.子供たちは見ている @シネマヴェーラ
★216.お嬢さん @ラピュタ阿佐ヶ谷

8月
★217.仮面の米国 @シネマヴェーラ
★★218.愛なき女 @シネマヴェーラ
★219.エル @シネマヴェーラ
★220.忘れられた人々 @シネマヴェーラ
221.ミッション・インポッシブル / デッド・レコニング part 1 @T-Joy 品川
222.わが恋わが歌 @神保町シアター
★223.賭博師の娘 @シネマヴェーラ
224.グラン・カジノ @シネマヴェーラ
★225.スサーナ @シネマヴェーラ
★226.パラダイスの夕暮れ @目黒シネマ
★227.真夜中の虹 @目黒シネマ
> 祝日で仕事中断。ラピュタの山本薩夫に行くつもりが予定変更、目黒シネマでアキ・カウリスマキ2本立て。寝てもいいや、と思っていたら予想外の混雑、さらに両方とも傑作でびっくり。シーンごとのメモを取ってみたら自分にも映画が撮れるかもしれない、と錯覚しそうな、そんな傑作。

228.リボルバー・リリー @T-JOY 品川
★★229.二十一歳の父 @神保町シアター
230.番兵、気をつけろ! @シネマヴェーラ
231.バービー @T-JOY 品川
232.少年と犬 @新文芸坐
★233.ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 @目黒シネマ
234.一晩中 @目黒シネマ
> 朝10時からライヴの最終リハーサルを行なったあと、3時間を超える長さの映画とさらにもう1本。予想通り、睡魔に襲われて舟を漕ぐが、3時間超えの映画はデルフィーヌ・セイリグ主演ということもあって案外楽しめた。もう1本はタイトルの通り、ずっと夜のシーンばかり。そのうえ画質がよくないので途中から筋を追うのをあきらめた。すると、やはり頭の中では明後日のライヴについて考えている。それも予想していた通り。

235.暖春 @神保町シアター
236.街をぶっ飛ばせ @目黒シネマ
★237.家からの手紙 @目黒シネマ
238.ジェニーの肖像 @シネマヴェーラ
239.人間の壁 @ラピュタ阿佐ヶ谷
240.班女 @神保町シアター
241.辻が花 @神保町シアター
★★242.ぜったい多数 @神保町シアター
> 再見。前回は針が振れず。今回もやはり退屈、と思いつつも、いろいろな細部に松竹映画の記号を見出し、何より桑野みゆきの美しさに牽引されていた。ところが後半、転地療養した田村正和の手紙がモノローグで流れる場面から何か演出のタッチが変わる。65年の映画だが、後半は70年代を先取りしているような感覚。森谷司郎の青春映画にも似た瑞々しさ。いつのまにか泣いていた。これは自分の好みど真ん中の映画だと二度目に観て気づいた。「集金旅行」「二十一歳の父」「わが闘争」「夜の片鱗」きのう観た「辻が花」中村登にはいつも必ず強引に勝ちを持っていかれてしまう。クヤシイ。
> 北村和夫と内藤武敏と河野秋武の友情。蝶々夫人の加藤治子と二本柳寛。若者たちよりも魅力的な大人たち。10年前にも観ていたのに。感動したが何だかクヤシイ。

9月
243.長江哀歌 @目黒シネマ
★244.牡丹燈篭 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 山本薩夫「牡丹燈篭」ラピュタ阿佐ヶ谷。けっして多く観ているジャンルではないが、いままで観たお化け・ホラー・恐怖映画の中で飛び抜けて音楽が美しい。お化けだけに地に足のついていない、低音部を排したヴァイオリンだけの「不協和音の雲」のような音楽。あの人、と思ったらやはり池野成。最敬礼。
> 山本薩夫は女を描くのが不得意、という評判。自分もそう思っていたが、この作品で大塚道子と赤座美代子が最初に登場する場面の美しさには驚いてしまった。素晴らしいが傑作、とまではいかない映画。佐々木孝丸の眉毛。木村玄の台詞の多さ。荒木忍の額の血管。見どころ満載。

245.青い青い海 @シネマヴェーラ
246.夢 @シネマヴェーラ
★247.銀座カンカン娘 @神保町シアター
248.俺の拳銃は素早い @神保町シアター
249.チェス狂 @シネマヴェーラ
250.カメラを持った男 @シネマヴェーラ
251.十三人 @シネマヴェーラ
252.北京の55日 @新文芸坐
> ニコラス・レイ「北京の55日」新文芸坐。初鑑賞。驚くばかりの超大作。小粒でピリッとした映画に才能を見せた人が何故こんな作品を引き受けたのか。でもオレも偶に断われずに身の丈に合わない仕事をしてる、って自分と比べるなよ。そして世界的なスターに混じって英語で演技する伊丹一三の孤独を思う。

★253.ワイルド・ギース @新文芸坐
> タイトルデザインがモーリス・ビンダーだった。

254.合衆国最後の日 @新文芸坐
255.絶好調 @目黒シネマ
★256.健康でさえあれば @目黒シネマ
「不眠症」「シネマトグラフ」「健康でさえあれば」「もう森へなんか行かない」
★257.破局 @目黒シネマ
★258.恋する男 @目黒シネマ
259.ヨーヨー @目黒シネマ
> 目黒シネマでピエール・エテックスを連続で。短編「絶好調」凡作。「健康でさえあれば」これもダメかな、と思ったらラストの話で大笑い!「破局」短編。笑いと死と。佳作。「恋する男」初長編。小粒ながら身につまされる傑作。「ヨーヨー」空回りするナルシズム。壮大な失敗作。プログラムを買ったり。

260.坊ちゃん記者 @神保町シアター
261.女番長 玉突き遊び @ラピュタ阿佐ヶ谷
★262.悪太郎 @神保町シアター
> 鈴木清順「悪太郎」神保町シアター。とくに「刺青一代」「殺しの烙印」などのようにケレン味たっぷりの演出ではないのに、ただ室内の中央に立つ高峰三枝子の画面とか、なぜか強烈に「アングラ」感が立ち昇る。初期の林静一、つげ義春のような「前衛」感。これぞ「映画主義」!観る度に好きになる作品。
> むかし、大学生の頃、「ツィゴイネルワイゼン」人気で鈴木清順のオールナイトに行って観た「悪太郎」も「悪太郎伝」も「けんかえれじい」も、フィルムのコマが飛び過ぎていて、なんの話か全く分からなかった。いま名画座で掛かる映画ってホントにキレイ。

★263.TAR @新文芸坐
264.極道の妻たち 赫い絆 @ラピュタ阿佐ヶ谷
265.極道の妻たち-赤い殺意- @ラピュタ阿佐ヶ谷
★266.女番長 タイマン勝負 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★267.街が眠る時 @神保町シアター
268.燃える雲 @シネマヴェーラ
269.海の野郎ども @シネマヴェーラ
> 神戸とか横浜とか、港湾労働者のいる街で働くアフロアメリカンの男が、わりと綺麗な声で「誰も知らない私の悩み nobody knows the troubles I’ve seen」を歌う。映画の中でこういう場面を観たのはきょうが最初ではない気がする。こんな絵に描いたような月並み表現、オレも沢山やらかしてるんだろうな。

★270.極道の妻たち 死んで貰います @ラピュタ阿佐ヶ谷
271.団鬼六 緊縛卍責め @ラピュタ阿佐ヶ谷
★★272.桃の花の咲く下で @神保町シアター
★273.式日 @早稲田松竹
274.トップをねらえ @早稲田松竹
275.ザ・スーパーガール 第19話 裸で狼の群れと闘え @ラピュタ阿佐ヶ谷
276.大奥浮世風呂 @ラピュタ阿佐ヶ谷

10月
277.歌え!青春 はりきり娘 @シネマヴェーラ
278.大森林に向って立つ @シネマヴェーラ
★279.ビッグ・ガン @新文芸坐
> 新文芸坐で旧い洋画を3本。アラン・ドロン主演「ビッグ・ガン」ジャンニ・フェリオの音楽が素晴らしくてサントラを探すとやはり高額。どうやら封切り当時、日本のみの発売だったらしい。どう考えてもフィルムの編集が終わった後に書いたであろう緩急自在のスコア。どこかで安く見つけましょう。

★280.狼よさらば @新文芸坐
281.雨の訪問者 @新文芸坐
★★282.さらば友よ @新文芸坐
283.黒い誘惑 @シネマヴェーラ
284.空の下遠い夢 @シネマヴェーラ
285.およう @ラピュタ阿佐ヶ谷
286.札幌・横浜・雄琴・博多 トルコ渡り鳥 @ラピュタ阿佐ヶ谷
★287.娘の季節 @シネマヴェーラ
> 「あなたはソビエトの宇宙船が撮ってきた月の石の写真を信じますか?ぼくは信じない。人類がそんなに進歩してるなら、どうして人間は幸せにならないんです?」 川地民夫が妹の恋人・杉良太郎に言うセリフ。翌日、川地は不治の病に冒された恋人と心中する。
> 樋口弘美「娘の季節」シネマヴェーラ。手放しで好きな映画とは言えないが、つよく印象に残った。初めて名前を知る監督。プロデューサーはやはり大塚和。

288.君の名は 第一部 @神保町シアター
289.虹を抱く処女 @シネマヴェーラ
290.霧の第三桟橋 @シネマヴェーラ
291.君ゆえに @シネマヴェーラ
★★292.男が血を見た時 @シネマヴェーラ
> 三輪彰「男が血を見た時」ヴェーラ。本日は5本連続で観たが、この映画だけスピード感が違った。白バイ警官より逃走する場面から、ヒロインとの出逢い、恋の鞘当て、凶悪犯、ライバルとの勝負と展開の速さに感動。三ツ矢歌子が鳴門洋二の手からピストルを落とす場面!ラス・メイヤーや清順よりコッチ!

293.森繁のやりくり社員 @シネマヴェーラ
294.海猫が飛んで @神保町シアター
295.續チャッカリ夫人とウッカリ夫人 底抜けアベック三段とび @シネマヴェーラ
★★296.天の夕顔 @シネマヴェーラ
297.湯の町姉妹 @シネマヴェーラ
298.花と波濤 @シネマヴェーラ
299.荒原の掠奪者 @シネマヴェーラ
300.暁の非常線 @シネマヴェーラ
301.東海道非常警戒 @シネマヴェーラ
★★302.慈悲心鳥 @シネマヴェーラ
303.月が出た出た @シネマヴェーラ
304.メメント @新文芸坐
★305.朗らかに歩め @国立映画アーカイブ
★★306.学生ロマンス 若き日 @国立映画アーカイブ
> 国立映画アーカイブで小津安二郎の「朗らかに歩め」「学生ロマンス 若き日」ピアノ演奏付き上映。1本目も良かったが「若き日」が良すぎて霞んだ。ジャック・アンリ・ラルティーグとかジャック・ベッケルとかルビッチとかを連想。小津や清水宏って芸術家としての大きさが違うんだ、と理解した。
> きょう国立映画アーカイブで観た2本の小津安二郎の映画に出ていた大山健二を観て、こういう役ばかりなら自分も映画俳優になってもよかったかな、なりたかったな、と考えた。大山健二とか大映の小笠原まりこ、みたいな映画人生。小笠原まりこ、レコードも出してたのか、、

★★307.最後の女たち @シネマヴェーラ
> 楠田清「最後の女たち」ヴェーラ。社会党の制作した反戦映画?とのことで期待せず観たが驚いた。サイパン玉砕の話だがとにかく在留邦人たちに対する日本の軍人たちの非道の数々を怒りと憎しみを込めて描く。キューブリックもフラーもペキンパーもイーストウッドもこの映画を観ただろうか。憤怒の映画。

308.美男をめぐる十人の女 @シネマヴェーラ
309.あばれ行燈 @シネマヴェーラ
★310.母の秘密 @シネマヴェーラ
★★311.灼熱の椅子 @シネマヴェーラ

11月
312.探偵マーロウ @新文芸坐
> ニール・ジョーダン「探偵マーロウ」新文芸坐。途中まで観てようやく気付いたのはレイモンド・チャンドラーの原作ではないこと。そう言えば誰も主人公にフィル、と呼びかけないな、と思ったらエンドロールにはフィリップ・マーロウと出た。アルトマン「ロング・グッドバイ」と併映しちゃダメでしょ。

★313.香港ノクターン @国立映画アーカイブ
> 井上梅次「香港ノクターン」NFAJ。前半は「香港映画の監督が「踊りたい夜」をリメイクした映画」にしか見えなかったが、やがて「いかにも梅次」の映画になって、後半は「あるハリウッド製ミュージカルに心酔する作家」の映画、に化けた。このジャンルを心から愛する人が本領発揮した幸福な映画だった。

314.ドミノ @T-JOY品川
315.闇に流れる口笛 @シネマヴェーラ
★★316.警視庁物語 十二人の刑事 @ラピュタ阿佐ヶ谷
> 村山新治「警視庁物語 十二人の刑事」ラピュタ。東映の脇役俳優たちが、こんな場面にこんな役柄で出てくるのか!という嬉しい驚きの連続。またこのシリーズ、刑事たちの小さい芝居が嬉しい。今回は切り分けた西瓜に指で塩を擦り付ける中山昭二とか。オレが旧作邦画に求める要素が全て詰まった大傑作。

★★317.野獣の復活 @シネマヴェーラ
318.夜の狼 @シネマヴェーラ
★319.勝利者 @国立映画アーカイブ
320.三太頑張れ @国立映画アーカイブ
321.スパイと貞操 @新文芸坐
★★322.太陽と血と砂 @新文芸坐
> 小野田嘉幹「太陽と血と砂」新文芸坐。三ツ矢歌子の水着姿を拝むことができたら、くらいの気持ちで観に行ったら横っ面を張り飛ばされた。すぐに画面から去ってしまう池内淳子。チキン過ぎる寺島達夫。怯える鳴門洋二。とにかく素晴らしい松原緑郎。「狂った果実」の最高の変奏曲。新東宝バンザイ!

★323.非情な銃弾 @シネマヴェーラ
324.獣のいる街 @シネマヴェーラ
325.九人の死刑囚 @シネマヴェーラ
326.逃亡者 @シネマヴェーラ
★★327.若い傾斜 @シネマヴェーラ
> 西河克己「若い傾斜」シネマヴェーラ。7年前に観たとき自分は★を付けなかったのは何故だったのか。黄金期の日本映画にはこの程度の水準の作品がまだまだある、と思っていたのか。赤城圭一郎演じるシニカルな青年の人物造形がとにかく素晴らしく、何度も落涙。最近オレは涙もろくなっているのよ。
> 正義感の強い主人公・川地民夫に対して斜に構えた同級生の赤木だが、その屈折した優しさからかつてこの男も正義を信じていたのだろう、と思えてくる描写。西河克己は「美しい庵主さん」でも小林旭を素晴らしい脇役に仕立てていた。それにしても、これで79分の映画。

★328.殺られる前にやれ @シネマヴェーラ
329.悪の報酬 @シネマヴェーラ
330.顔役(ボス)@シネマヴェーラ
★★331.二日間の出会い @シネマヴェーラ
★332.愚かなり我が心 @シネマヴェーラ
★333.ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜 @神保町シアター
> 根岸吉太郎「ヴィヨンの妻」神保町シアター。はじめて広末涼子を美しいと感じた。松たか子も浅野忠信も妻夫木聡も美しく映っていた。伊武雅刀は殿山泰司を意識している?とにかく「椿屋」という居酒屋の場面が魅力的で、それだけをずっと観ていたいと思った。
> 映画の感想とは違うが、浅野忠信が妻夫木聡と酒を飲む場面で「自分は気が弱く、こうして頭がグラグラするほど酔っていないと他人と向き合えない」と語るのを観て、とつぜんアルコールに淫していた頃のECDのことを思い出した。その頃は周囲の人々から話を聞くばかり。また自分も酒に溺れていたが。

12月
334.いいかげん馬鹿 @神保町シアター
★335.月光の女 @シネマヴェーラ
336.拳銃貸します @シネマヴェーラ
★★337.摩天楼 @シネマヴェーラ
> キング・ヴィダー「摩天楼」ヴェーラ。つよく感情を揺さぶられる映画だった。よりによって今週観ることになるとは。新聞王?を演じたレイモンド・マッセイが秀逸。顔だけで強烈な説得力。いっぽうヒロインのパトリシア・ニールは残念な程の悪声。そしていよいよゲイリー・クーパーという俳優の虜となった。

★338.コニャックの男 @新文芸坐
★339.ハムレット・ゴーズ・ビジネス @ユーロスペース
★340.罪と罰 @ユーロスペース
★341.太陽の下の10万ドル @新文芸坐
★★342.兄とその妹 @国立映画アーカイブ
★343.冬木博士の家族 @国立映画アーカイブ
> いま国立映画アーカイブの一階で、今晩の映画の当日分のチケットの販売が始まるのを待っているのだが、自分のすぐ前に並ぶ年配の男性がずっとおならばかりしていて、いま4回目を聞いた。これは、オレの背後に立つな、という威嚇のメッセージなのか。背中の丸いゴルゴ13。

★344.パリの大泥棒 @新文芸坐
> ルイ・マル「パリの大泥棒」新文芸坐。兵役から戻ると育ての叔父は受け取るはずの遺産を食い潰し、幼馴染の恋人も他の男と婚約していた。だが決して激することのない主人公。それからの泥棒修行をやはりくすぐりもなく淡々と描く監督の語り口。気がつくと噺家は高座で頭を下げている。名人芸に拍手を。

★345.枯れ葉 @ユーロスペース
> 「行こう」
「どこへ?」
「カラオケ。金曜日の夜だ」
「なぜ俺を誘う?タフな男は歌わない」
アキ・カウリスマキ「枯れ葉」主人公の男と、仕事の相棒の会話。覚え書き。

★★346.ゴジラ-1.0 @TOHO シネマズ渋谷
> 渋谷のロードショー館で映画。二日連続DJだったので、最前列の席でだらしなく足を投げ出し行儀の悪いポーズで上映を待っていたら、劇場に入ってきた鳥打帽にジャンパーのオッさんに睨まれる。近づいていよいよ顔を覗き込むので因縁をつけてくるのか、と身構えたら「お久しぶり、サエキけんぞうです」!

★347.喜劇 男の泣きどころ @神保町シアター
348.暴風の処女 @シネマヴェーラ
★349.大いなる罪びと @シネマヴェーラ
350.港の女 @シネマヴェーラ
> ラウール・ウォルシュ「港の女」ヴェーラ。たぶん1970〜80年代に権利を買った会社がサイレント映画に新たに音楽を付けたと思しき作品。エンドマークが出た後、約4分間の長きに亘って音楽が流れるも画面は黒味のみ。普段、劇場でエンドロール中に席を立つのを批判する輩はどうする?オレは途中で退席。

★351.PERFECT DAYS @T-Joy品川
352.PERFECT DAYS @TOHOシネマズ錦糸町
> W.ヴェンダース「PERFECT DAYS」思うところあって2回目の鑑賞。絶賛したいが何か引っ掛かる。カウリスマキの新作よりずっと強い印象を受けたが、小さく贔屓にしたいのは「枯れ葉」の方かも。2度目を観たらまた割り切れない部分を見つけた。でも三浦友和に泣かされるなんて幸福な体験でもある。問題作。
> この映画を2度観て2度とも連想したのは何故か「ファイヴ・イージー・ピーセス」だった。こちらは兄と妹、向こうは姉と弟だったか。それもなんだかイヤだった。

353.テンション @シネマヴェーラ
354.ボディ・アンド・ソウル @シネマヴェーラ
355.群狼の街 @シネマヴェーラ
>シネマヴェーラで3本。どれも素晴らしいとは思うが、何か後味が良くない。今年の残り3日間もこの「赤狩り時代のフィルム・ノワール」特集に通うつもりだったが、年内はこれで映画も打ち止め。



●2023年の37本
小澤啓一「侠花列伝 襲名賭博」ラピュタ阿佐ヶ谷
ジャン・グレミヨン「曳き舟」シネマヴェーラ
ジャック・ベッケル「偽れる装い」シネマヴェーラ
本田猪四郎「美女と液体人間」ラピュタ阿佐ヶ谷
井上梅次「群衆の中の太陽」シネマヴェーラ
鈴木清順「ハイティーンやくざ」シネマヴェーラ
瑞穂春海「森繁よ何処へ行く」シネマヴェーラ
志村敏夫「姫君と浪人」シネマヴェーラ
川頭義郎「手さぐりの青春」神保町シアター
大庭秀雄「稲妻」神保町シアター
市村泰一「花の宴」ラピュタ阿佐ヶ谷
ジョン・フォード「栄光何するものぞ」シネマヴェーラ
ドン・シーゲル「ベツレヘムの星」シネマヴェーラ
近藤節也「アイ・ジョージ物語 太陽の子」ラピュタ阿佐ヶ谷
ラウール・ウォルシュ「鉄腕ジム」シネマヴェーラ
マキノ雅弘「いれずみ半太郎」ラピュタ阿佐ヶ谷
ポール・シュレーダー「カード・カウンター」ヒューマントラストシネマ渋谷
ルイス・ブニュエル「愛なき女」シネマヴェーラ
アキ・カウリスマキ「パラダイスの夕暮れ」目黒シネマ
アキ・カウリスマキ「真夜中の虹」目黒シネマ
中村登「二十一歳の父」神保町シアター
中村登「ぜったい多数」神保町シアター
山本薩夫「牡丹燈篭」ラピュタ阿佐ヶ谷
清水宏「桃の花の咲く下で」神保町シアター
ジャン・エルマン「さらば友よ」新文芸坐
三輪彰「男が血を見た時」シネマヴェーラ
阿部豊「天の夕顔」シネマヴェーラ
松林宗恵「慈悲心鳥」シネマヴェーラ
小津安二郎「学生ロマンス 若き日」国立映画アーカイブ
楠田清「最後の女たち」シネマヴェーラ
野口博志「灼熱の椅子」シネマヴェーラ
村山新治「警視庁物語 十二人の刑事」ラピュタ阿佐ヶ谷
山本迪夫「野獣の復活」シネマヴェーラ
小野田嘉幹「太陽と血と砂」新文芸坐
西河克己「若い傾斜」シネマヴェーラ
キング・ヴィダー「摩天楼」シネマヴェーラ
ルイ・マル「パリの大泥棒」新文芸坐



 ここまで、この「映画メモ」の掲載を準備していたところで、ミルクマン斉藤さんの訃報を知った。

 ちょうど元日の夜、配信で『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』という映画を観ていて、その中のある場面を観ながらミルクマンさんのことを思い出していた。それはハリスン・フォード演ずるジョーンズ教授が大学を退任する?日、おりしも屋外ではアポロ11号が人類最初の月面軟着陸より生還して凱旋パレードを行っている、というシーンで、画面の中では花吹雪が舞い、ブラスバンドが演奏して、騎馬兵が行進を引率している。

 ミルクマン斉藤さんと知り合ったのが1992年だったか、93年だったか、94年のことだったか、いまとつぜん思い出せなくなってしまった。場所は大阪、たしかアメ村の一画にあった大バコのクラブ。FPMの田中知之さんのオーガナイズするパーティーで、その日のVJとして参加していたのが伊藤弘さんとミルクマン斉藤さんだった。

 その夜、自分はDJとして招かれたが、会場に入ったあとはずっとダンスフロアの上に設えられた大きなスクリーンに釘付けとなってしまった。音楽に合わせて次々とあらわれるシャープなデザインのグラフィック映像と、その間に挟まれる古今東西のさまざまな映画のシーンのカットアップ。そのチョイスがあまりにも素晴らしい。いったいこのふたりは何者なんだ。田中知之さんがうれしそうに紹介してくださったことを記憶している。それから間も無くスタートしたピチカート・ファイヴのライヴツアーに、伊藤弘さんとミルクマン斉藤さんにも参加していただいた。

 知り合ったとき、ミルクマンさんは本職はバンドマン、トランペットを吹いている、と仰っていた。いっぽう伊藤さんはジャズDJだと田中さんに教えてもらったのではなかったか。とにかくお二人は圧倒的に博識で、そのうえ独特のウィットがあって、ライヴの打ち上げはいつも楽しみだった。

 ライヴのために「グルーヴィジョンズ」に作っていただいた映像は本当に凄いものだった。伊藤弘さんはきっといつものようにおだやかに頭の中にあるアイデアをかたちにしていったのだろうが、ミルクマンさんはいったいどのようにしてあの映画のカットアップを仕上げたのだろうか。すべてが素晴らしいイメージだったが、中でも忘れられないのが1997年のツアーにおける「トゥイギー・トゥイギー」というアンコール曲での、沢島忠監督作品の「花のお江戸のモブシーン」ばかりを猛烈なスピードで次々と繰り出していく映像。いまこのカットアップのことを思い出していたら、とめどもなく涙が出てきた。悲しいのではなくて、本当にグルーヴィーだったから。そしてもう一曲、あれはたしか「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」という曲のために作った映像。たぶんインスピレーションの湧いてこない退屈な音楽だったのだろう、めずらしく斉藤さんから、どういうのが良いですか、と問われたので、なんかパレードとかバトントワリングとかチアリーディングなんかが見えると良いかも、と考えもなく適当なことを言ったのだった。そのひと言からミルクマン斉藤さんと伊藤弘さんが作り上げた映像を観たのはツアー直前の通しリハーサルのとき。ただひたすら圧倒されて、なんだか心の底から笑ってしまった。

 あのとき以来、映画を観ていてパレードやチアの場面に遭遇すると、かならずミルクマン斉藤さんのお顔が浮かんでしまう。元日の夜に観た「インディ・ジョーンズ」のパレードの場面。あれは彼からのちょっとした挨拶だったのにちがいない。お疲れ様でした。またご挨拶に伺います。


イラスト / 山本アマネ