05. SOLDES ! SOLDES ! SOLDES !

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年末年始、何も予定を入れていなかった私は、一月二日にはすっかり退屈してしまい、妹に電話をかけ、愚痴をこぼす始末。体調の愚痴、仕事の愚痴、世相の愚痴、恋愛の愚痴。堪りかねた妹はひとこと。
「初売りにでも行ってくればいいじゃん、いま9時47分だけど、お姉ちゃんの部屋からなら10時の開店に間に合うよ」
そうね、初売りにでも行ったら、否が応でも元気が出るでしょう。
私は大急ぎで支度を整え、タクシーに乗り込む。

何をするでも前倒しの傾向にあるここ日本では、初売り=セール初日とするデパートが多い。手にとる値札はどれも見事に貼り足されている。
私はほくそ笑みながら、年末から目星をつけていたMax Maraのセーターとスカート、ETROのバッグを買った。
そして、ふらりと足を踏み入れたフェラガモで、ローヒールのパンプスも。

正価を払ってでも、静かな店内で落ち着いて物を選ぶほうが好き――その言葉に嘘はない。丁寧な店員の応対。リボンのかかった大きな箱。なによりシーズン初めに買ったものを身につけて、街を歩くのは気持ちがいい。新しい季節には新しい服。
でも、だからと言ってセールが嫌いなわけじゃない。それは、きっと買い物好きなひとたち、万人の思い。欲しいものが安く手に入るならそれに越したことはない。

家に着くなり早々に赤い箱を開ける。中から出てくるのは美しいスウェードのボルドーのパンプス。
私はターコイズのニットワンピースに着替え、パンプスを穿き、鏡の前に立ってみる。
うん、いい感じ。白いタイツとの相性もばっちりね。
衝動買いの割にいい買い物ができたかも。
心の中でつぶやくと、もうひとりの自分がたたみかける。
――だって、フェラガモの靴だもの、裏切らないわよ。

そう、フェラガモの靴は、足が華奢に見えるところが好き。
実際よりも一回り小さく見えるところが好き。
女性らしい足に見えるところが好き。
それが普段より安く手に入ったんだもの。
当然、私は最高の気分。
朝の退屈なんて吹き飛んじゃった。
新しい年はラッキーな始まり。
だから、私はお買いものが好きなの。
ソルドが大好きなの!

(2016.2.1)