今日は車でどこへ行こう 第二回 満月の精霊流し
8月の満月の夜、 私はベトナムの中部ホイアンにいた。
現地では祖先供養をするこの日。 家々の電気は消え、軒先はランタンで飾られ、 人々は祖先に捧げるためのお供え物をする。
ランタンの灯りだけが 古都をやさしく照らし出すなか、 灯篭を川に流し、精霊流しを行う。
日本のお盆のような行事が、新月と満月、 月に二度も頻繁に行われるのことや 月の満ち欠けが関係することに驚きながら 生まれて初めて舟から灯籠を流した。
十六夜。明かりのなかった時代、 日々その姿を変える月に 人々は何をなぞらえていたのか。
神秘に包まれたものや 風情を感じるもの、 曖昧模糊としたものが 今より身近だったのだろうか。