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長谷部千彩さま

そうでした。はじめて会ったあとで、長谷部さんのお名前で検索してみたら、その当時のブログがヒットしました。そこで、パソコンを自作していることを読んで、おもしろい人だなと思ったことを思い出しました。わたしにとってはパソコン自体がブラックボックスであると同時に、そのパソコンによってもたらされるインターネットの世界もまた、ブラックなものに満ちています。最初はあんなにワクワクしたインターネットなのに、ブラック度は高まるばかり。依然としてワクワクするものはあるけれど、ブラックの行き過ぎにはザワザワしてしまう。

コロナが落ち着いているうちに友人に会おうと誘ったり誘われたりで、本を読む時間があまりとれないままです。本、といっても小説が好きなので、細切れの時間に少しずつ読む、ということができません。アリ・スミスの『秋』がよかったので、最近出版された『冬』を発売日に買ったのですが、まだ積読中。『秋』『冬』『春』『夏』と続く四部作で、とても楽しみ。たっぷりと時間のある日に最初のページを開いて、できればそのまま最後まで読みたいなと思っています。短編はいくつか読みましたよ。たった5ページの「あんなカレーに……」には思わず笑ってしまいました。こども部屋の風景と化した父親の本棚。その部屋で眠るこどもが眠る前に毎晩眺めている『アンナ・カレーニナ』という背表紙の文字からいろんな物語を考えるのですが、タイトルからわかるようにいくつかカレーが出てきます。4コマまんがみたいなおもしろさとでもいうのか、読書は越境という体験だと思うのですが、中身を読む前に、タイトルだけからの越境もありうることを発見しました。朝日文庫の『25の短編小説』に収録されています。作者の小川哲という人の別の小説も読んでみたくなりました。SFの著作が何冊かあるとすぐにわかるのはブラックボックスのおかげです。

日本人は鉄腕アトムやドラえもんを筆頭に、人間のようなこころを持っているロボットの存在に親しんでいるので、ほんとのロボットのことも受け入れやすいのだそうです。ほんとかな? 島田虎之助は『トロイメライ』を読んだことがあります。白と黒とのコントラストがはっきりした絵が新鮮でした。ひところ少女漫画を熱心に読みましたが、このごろはアンテナの感度が鈍くなったのか、読みたいと思うものがひっかかりません。ちょっとさみしい。

今年も残りわずかですね。図書館で予約したオードリー・タンの『自由への手紙』はまだまだ順番がまわってきませんし、予定どおりにいかないことばかりの年末ですが、いつものように日々は過ぎていきます。

2021.12.15
八巻美恵

八巻美恵 YAMAKI MIE 編集者  suigyu.com