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長谷部千彩さま

コンピュータの動きがなんとなく遅くなってきたので、いまのうちに新しいのに取り替えたほうがいいかなと思い、先月買って箱に入ったまま置いてあったMacBook Airをなんとか使えるようにしました。パソコンはなくてはならない道具だけれど、単なる道具という閾をとっくに超えてしまっているのに、その芯の部分のようなところがわたしには理解不能です。なんだかわからないものと毎日こんなに親しく(?)そして便利につきあっていると、いつも漠然とした納得のいかなさや不安につきまとわれています。いつも「なんだかイヤだなあ」と感じている。世界はどこかが何かがまちがっているのかもしれません。

そんなうっすらとした不安を感じる日々だったので、読んだ本はほんの少しです。出かけたときに書店に寄り、新刊の文庫の平積みを見て、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』を買いました。本文は大きな文字で70ページほど、写真も入っています。短いので、買ったその日のうちに読んでしまいました。昔読んだのに、内容はすっかり忘れていたし、こういうときに読んだのはよかったと思います。本はやっぱり生き物です。

なによりも『センス・オブ・ワンダー』というタイトルが素晴らしい。小さな甥っ子のロジャーといっしょに自然に触れるとき、年齢に関係なく二人が対等なのがわかるのも素晴らしい。「わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。」というセンテンスを読んだときには、子どもの教育について思いを巡らせている長谷部さんのことを思い出しました。本文の後に、福岡伸一、若松英輔、大隈典子、角野栄子の短いエッセイが付いていて、どれもよかったです。それはきっと、本文がいいからですね。

『自由への手紙』は夏の終わりに図書館に予約をいれました。たくさんの人が予約していて、わたしの番がくるまで、あとひと月くらいはかかりそうです。買ってもよかったけれど、ちょっとの間待ってみることで、自分の興味が変わるかもしれないことを観察することにしました。だから楽しみに待っているところです。

コロナは今落ち着いているからといって安心はできませんね。自分でできる対策は怠らずに、もう少し生きのびましょう。元気でいてください。

2021.11.21
八巻美恵

八巻美恵 YAMAKI MIE 編集者  suigyu.com