石川直樹 この星の光の地図を写す

石川直樹 この星の光の地図を写す
東京オペラシティ アートギャラリー 2019/1/12〜3/24

早起きな娘の影響で私はすっかり朝型人間になった。夜8時30分には娘と寝落ちして朝6時すぎに起きる。それは週末であろうと変わらないから、8時すぎには出かけていることが多い。行き先が決まっていない場合は、早い時間から営業している近所のコーヒースタンドへ立ち寄り、その日のスケジュールを考える。どこどこの水族館は9時30から営業している、などGoogle検索で調べながら。

その週末も行き先も決まらないまま、朝から車で山手通りを走っていた。ふと、写真家・石川直樹さんの展覧会が始まっていることを思い出し、そのまま東京オペラシティのアートギャラリーのある初台へと向かうことにした。三歳の娘には退屈かもしれないが、他にいい行き先のアイデアも生まれないので、まぁ良しとした。

『この星の光の地図を写す』と題された展覧会。一年の大半を旅しながら、各地を歩き続ける冒険家・石川直樹さん。彼の初期作品から最新作まで約300点もの作品が展示されていた。ギャラリー空間が国や地域毎に区切られ、次の部屋に移動すると別の世界に訪れたように印象がガラッと変わる。そんなダイナミックな演出が娘の心を刺激したのか、幼いなりに楽しんでいる様子で安心した。

そして私はというと、石川直樹さんの写真を観る目的で来てはいたのだけれど、作品横に貼られたとある説明パネルに釘づけになっていた。彼が世界を見て回って感じていることが、私が近年考えていたことと通じていたからだ。

そこには、かつて作家のル・クレジオが8,000を超える大小の島々が浮かぶ「ポリネシア・トライアングル」を「見えない大陸」と呼んだことに触れられていた。そして彼は「それは無数の境界線を抱えた不安定に揺れる大陸ではなく、海によって柔らかに繋がる分かちがたい多島海」と称し、さらに「小さな島々が、強大な大陸に勝る有機的なネットワークをもちうることを、ポリネシア人たちは自ら証明していると言えるだろう」と続けていた。

会社を設立して丸4年。今後の展開に日々思いを巡らせているけれど、私は利益追求を重視する強靭な組織を作りたいわけではない。だからと言って非営利団体を目指しているわけでもない。その時に頭に浮かぶのは、信頼できる人たちと互いを縛り合わずに、緩やかにサポートし合える場、私の会社がそうなったらいいなぁということだ。まさに「小さな島々」が「有機的なネットワーク」で繋がることで作られる「ポリネシア・トライアングル」、「見えない大陸」のイメージだ。

そんなこともあり、仕事のヒントも得られた私は、今回の展覧会を想定外の形で楽しんだ。予定していなかったスケジュールだったけれど、なりゆきに任せてみると意外といいことがあるものだ。気が向いたら、その通りに行動してみる。そのくらいの気持ちで今週末も過ごしてみようと思う。

東京オペラシティ アートギャラリー[3Fギャラリー1, 2]
東京都新宿区西新宿3-20-2
03-5777-8600
開館時間:11:00~19:00
(金・土曜は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
休館日 : 月曜(祝日の場合は翌火曜)・展示替期間中・
年末年始・全館休館日(2月第2日曜、8月第1日曜)
https://www.operacity.jp/ag/exh217/