RANDOM DIARY:COVID-19 斉藤典貴

コロナウィルスが存在する世界で暮らす一週間。
通り過ぎていく飛行機と休日のプール。
WBCの決勝戦。カレーの値段は35%アップ。
雨上がりの街。24時間営業の書店で本を買う。

2023年3月19日(日)

8時に起床。ベランダに出ると、桜がさらに色づき始めている。晴天だが少し空気が冷たい。トーストとチーズ、果物、ヨーグルト、紅茶の朝食。変わるのは果物の内容くらいで、20年以上ほぼ毎日同じメニュー。朝食後には掃除と洗濯。これもまた20年以上変わらない休日のルーティンだ。ここのところ休日にも外出していることが多かったからか、思っている以上に体が疲れているようだ。口内炎ができている。コロナ禍以降、一度もなかったのに……。昼食は簡単にパスタを作って食べる。昼食後はiPadにスイッチを入れ、Netflixで途中になっていた韓国ドラマを見る。夕方、ジムのプールに出かけ1500m泳ぐ。身体のコリがちょうどよくほぐれ、気分がリフレッシュ。これも16年続けている休日のルーティンで、自分にとっては仕事を続けるための大切な身体のケアでもある。夕食は野菜を中心に、少量の肉料理と卵料理、チーズ、赤ワインで早めにすませ、ゆっくり過ごす。久しぶりにのんびりした休日だった。


2023年3月20日(月)

7時半起床。今週来週は4月に刊行する担当本の入稿、校了作業のため、緊張する毎日が続く。10時に豪徳寺に行き、著者のKさんから最終の校正ゲラを受け取る。自宅に戻るとデザイナーのYさんからカバーまわりの入稿データが届いていたので内容を確認し、印刷所に入稿する。Yさんに色校の予定を伝え、本文の最終修正を整理して送る。昼ごはんを作る時間が取れそうもないので、コンビニでおにぎりを調達。コンビニへ行っている間に、7月に刊行する担当本の本文レイアウトがデザイナーのNさんから届いている。すぐに確認し、数箇所修正を依頼して、InDesignデータを送ってもらう。昼ごはんを済ませた後、原稿を整理して、DTP担当者にInDesignデータとともに送る。時計を見るとすでに14時。急ぎ支度をして、著者のHさんとの打ち合わせのため広尾へ向かう。17時半に打ち合わせを終え、渋谷へ向かう道すがら上空の轟音に気づく。空を見上げると数分おきに飛行機が通り過ぎていく。何機も何機も。いつから東京の中心部をこんなに頻繁に低空飛行するようになったのだろうか。


2023年3月21日(火)

今日は春分の日の休日だが7時半に起床。WBCの準決勝・日本対メキシコをテレビ観戦する。ちょっとしたことで流れが変わる怖さをまざまざと実感したゲーム。若い選手たちがあのような緊張感いっぱいのゲームをもう1試合経験できることが何よりよかった。明日の決勝戦も楽しみだ。午後には駒沢公園まで散歩。桜はもちろんだが、新芽が出始めた欅の新緑が目に鮮やかで、まさに眼福。今年はうっかりしていて木蓮の開花には間に合わなかったが、なんとか最後の一瞬を楽しむこともできた。公園内は4年ぶりにシートを広げての花見が解禁ということもあってか、多くの人で賑わい、みんな楽しそうに宴会をしている。マスクをしている人も少なく、コロナから少しずつ抜け出しつつある感じがした。家路につく途中、なじみのダイナーに立ち寄り、ちょっとだけビールを楽しむ。夕方、散髪に出かけて、マッサージもしてもらい、すっかりリラックス。よい休日だった。


2023年3月22日(水)

7時半起床。明日からしばらく雨とのことなので洗濯機をまわし、WBCの決勝・日本対アメリカをテレビ観戦する。今日は自宅での作業の日。9時半、机につく。まずは5月刊行本の注文書コピーのチェック。続いて4月刊行本の入稿前最後の校正。もう一度、目次と見出し、ハシラ、ノンブル、奥付などを中心に念校ゲラを確認すると1箇所直し漏れを見つけ、ほっとする。(気づいてよかった〜)。そんなこんなするうちに一昨日DTP担当者に送った7月刊行本の初校ゲラのPDFが届き、すぐに校正者のスケジュールを押さえるため電話で連絡。(おっ、日本が勝った。優勝おめでとう!)。昼食をはさみ、6月刊行本のデザイナーと打ち合わせが明後日にあるので、再校を見ながら相談内容をまとめる。そして15時から17時までzoomで定例会議に参加。最後にメールの返信などをして今日の業務終了。担当本は常に複数が同時進行しているが、そこに会議とWBCの決勝戦が重なり、ほとんど机から離れることのない1日だった。


2023年3月23日(木)

7時起床。1週間ぶりに神保町のオフィスに向かう。外へ出ると本降りの雨。春の匂いがする。電車に乗ると9割ほどの人がマスクをしている。公共交通の車内はまだこんな感じなのかもしれない。会社に着くと、まずは郵便物の確認。沖縄で「市場の古本屋ウララ」を営む宇田智子さんから『三年九か月三日 那覇市第一牧志公設市場を待ちながら』が届いている。2019年6月16日の閉場から2023年3月19日に公設市場が戻ってくるまで、隣接する自分の店の帳場から見つめた日記形式の記録だ。閉場の期間がコロナと重なったこともあり、来客が減るなど、気苦労が多かったに違いない。すぐに御礼の電話をして、近況報告など久しぶりにおしゃべりする。昼食後、7月に刊行する韓国文学の初校ゲラをプリントアウトして、注意して見てもらいたい箇所などメモを作る。14時から校正者のNさんと打ち合わせ。これまで20冊以上の韓国文学やエッセイを手がけてきたが、そのほとんどの校正をお願いしていて、本当に頼りになる人。15時過ぎ印刷所から4月刊行本のカバーまわりの色校が届く。16時、根津にあるYさんの事務所へ色校を届ける。明日までに確認してもらえるようお願いし帰宅する。夜はジムのプールに出かけ、水泳仲間たちと1時間ほど練習、1500m泳ぐ。


2023年3月24日(金)

7時起床。今日も雨が降っている。外へ出ると暖かい風が吹いている。もう梅雨のような気候だ。街路樹のハナミズキが芽吹いている。コロナ以降ではめずらしく2日続けて神保町のオフィスに出社する。会社に着くとYさんから色校の戻りがあり、「きれいに色が出ていてよかったです。変更はありません」とのこと。印刷所に連絡を入れる。昼食は久しぶりになじみのカレー店へ。メニューを見ると1000円だったチキンカレーが1350円になっている。35%アップ。近頃の物価高を考えると、この品質を維持するためにはしかたないところだろう。本の世界も昨年12月と比べると用紙代が30%ほど値上がりしている。そのほか印刷費や製本代も値上がりしている。書店の廃業が続き、刷り部数が減少しつつある中で、出版文化を次世代にどのように繋げていけばいいのか、さまざま転換を求められている気がする。13時に装丁家のTさんが来社し、6月刊行本のデザインの方向性を話し合う。15時から編集会議。半月ぶりに部員たちが顔を揃える。やはりオフラインでの打ち合わせは言葉が伝わりやすい。終了後、みんなと酒を飲みながらしばしくつろぐ。


2023年3月25日(土)

7時起床。窓を開けると今日も雨。しかも昨日とは打って変わって寒い。まずは朝食と掃除をすませる。今日は休日だが、講師を務めている韓国文学翻訳院の業務のため生徒から来ているレジュメと翻訳原稿に目を通す。昼食を挟み、さらに作業を続け、ひととおり講義用のメモをまとめて終了。読書しながら、ちょっと昼寝。休日はこの時間が楽しい。夕方、雨もあがったので松陰神社通り商店街まで散歩がてら買い物に。〈メルシーベイク〉でコーヒーとピーカンナッツのタルトとブランデーケーキを、〈染谷食肉フーズ〉でコロッケやメンチカツを、〈あのころ〉でコーヒー豆を調達する。〈山下書店〉がリニューアルを終えて営業を再開している。店頭には24時間オープンとある。19時から翌朝10時までは無人、セルフレジとのこと。書店も生き残りをかけて、いろいろなことを試しているようだ。自分の生活圏にある、ただ1軒の本屋さんなので、応援していかなければ。雑誌、文庫などを数冊買って、帰路につく。夕食後は読書などして、のんびり過ごす。