RANDOM DIARY:COVID-19 真舘嘉浩

コロナウィルスが存在する世界で暮らす一週間。
キング・クリムゾンと曇り空。
欲望はモニタ画面の向こう側。
アトラクション故障中の遊園地を歩く。

2021/1/14(木)

昨日に続けて空気が温かい。
寒さが大の苦手の僕にとっては心からありがたい日和だ。
洗濯物を取り込むと太陽の匂いがする。
早く春がここに来て欲しい。

今日から一週間の日記を書き始める。
こんな地味な暮らしが文章になるのだろうか?

新型コロナに対する立場は昨年の一月に決めた通り、「自分は無症状の感染者」として行動しよう、自分が元気でもウィルスの運び屋にはならないようにしようーーそう考えてから一年も経ってしまった。

二度目の緊急事態宣言から6日目。
仕事が一段落したものの、今日はお腹の具合が良くないので、整理したり休んだり出来る一日もまた良きかな。
明日も温かいといいな。


 
2021/1/15(金)

昨日と打って変わって重たい曇り空。
キング・クリムゾンのアルバムを2枚聴きながらが空の色にぴったりだなと思った。

Zoom会議が一本、直前になって明日に移動。
その時間を空けるためにアタフタしていたので一気に息が抜けてソファで会議予定時間分のうたた寝。

フリーランスなので時間もある程度は自由になる。
いつ「うたた寝」してもいい環境ではあるけれど、この一年ほど「その時間」を重要に感じることはなかった。

以前なら数日に一度はカフェなどで道ゆく人を見ながら「ボ〜」っと浮かぶアイデアをまとめたりしていた。
しかしこのコロナ禍で、すっかりカフェから遠くなってしまったので、いつもどこか感情が硬くなってしまっていたのかもしれない。

散歩がわりにころんとソファで目を閉じているとぼんやり浮かぶアイデアや仕事の進め方が見える。
カフェでしていた「ボ〜」が出来るようになった。

以前なら、ただ眠ってしまうだけだったけれど、これはけっこう大きい。

友よ、ボ〜っとしよう。


 
2021/1/16(土)

かなり温かいので買い物がてらに陽に当たろうと下北沢まで歩く。
近所のBONUS TRACKという商業施設からして人が多い。
下北沢の商店街もいつになく人だらけ。古着を買いに来るの?

感染が収るとはとても思えないような混んだ景色にティッシュやトイレットペーパーを持つ手が疲れてしまったので、久しぶりにハンバーガー屋さんのテラスで温かいレモレードを。

夜はストックホルムのイラストレーターさんを加えて、あるデザインのキックオフ・ビデオ会議。
敬愛するイラストレーションとともに仕事ができるなんて人生は奇遇と不思議とサプライスに満ちている。
今夜初めて使う会議用のアプリに戸惑った。

友人の会社の人がとか、あのスーパーでクラスター、とか聞くけれど、ついに知人の一人がPCR検査で陽性になったと聞く。
ビートルズでいえば「Revolver」がしっくり、の一日。


 
2021/1/17(日)

「休日なのでしっかりと散歩しよう」とパートナーと二人で世田谷代田から小田急線沿いに経堂まで歩く。

線路が高架になる以前は自転車での通勤路だったので、帰宅する深夜には線路脇にお化けらしいものも何度か遭遇したけれど、高架下にはレンタル倉庫やデイサービスの施設が並び、明るい通りとなって、今はもうあまり懐かしさも感じない。 豪徳寺のカフェで一息ついた。

さしてお腹も空いていないのにそのカフェに並ぶデニッシュやサンド、ふだん決して望まないパフェまで全て美味しそうに見える。
ちょっと方向を変えて散歩しただけで気持ちは随分と変わることを思い出した。

ここ一年、STAY HOMEとかの下で随分と出不精になってしまったと思う。
もっと外に出た方がいい。

この深夜に、しばらく面倒くさいと思っていた作業を終える。
人生のほとんどは「面倒くさい」と思う気持ちとの戦い。
寒いのでずっとレス・バクスター楽団をかけている。


 
2021/1/18(月)

昨日しっかり歩いたのが効いてぐっすりと眠ったらしい。
週明けなので電話やメールでのやりとりが増える。

年末にワイヤレスのヘッドフォンを手に入れてから急な電話でもiPhoneに挿すイヤフォンを探したり、コードのもつれを気にしないで済むようになった。

ネットでモノを買うということに正直なところ今まで消極的だったと思うけれど、そうそう出歩いて選んで・・・というわけにもいかずにここ一年でずいぶんと態度が変わった。

物欲がモニタ画面の向こう側にあることが不思議。
今日はモレスキンの手帳と池波正太郎の文庫が届いた。

伸びすぎてearly 70sのロッカーみたいだった髪を簡単にパートナーに切ってもらった。
次に髪を切るときは自由が丘のあの店、と決めていたけれど、またも外出を億劫がっている自分に気づく。

「CLUSTER(クラスター)」というグループを聴いている。
気持ち良すぎるので今夜も早く寝よう。


 
2021/1/19(火)

とても寒い北風が吹いている。
それでも雲はないのでベランダに腰を下ろして手を広げ、口を開けて、日光浴をする時間が出来た。
目を閉じていると顔から日差しで暖まる。

夜の早い時間に渋谷へ打ち合わせに。
人通りは多いものの、飲食店が軒並み閉まっている街はすべてのアトラクションが故障中の遊園地のように見えた。
早く春にならないだろうか。

そして人々もなんだかくたびれている様子。
お疲れさん、無理して元気にする必要もない。
ときにはゆっくり美味しいものを食べたいよね。
世界はしばらく元通りとはいかないのだろうけれど、好みや優先順位が身にしみて判ったきた。

久々にRaveenaの歌声を聴いてほっこりする深夜。
そして食欲が残った。


 
2021/1/20(水)

朝、大家さんの庭で盛りのついた猫の鳴き声で起きる。
これはそうだあれだ、明日あたりはきっと春だ。

ヨモギ茶というものを煮出して呑んでみる。
途端に胃腸がにぎやかに動き出した。
こういうニガい味はしばらくクセになりそう。

アメリカでは、バイデン就任式やトランプ退任式の日。
ほぼ一日を珍しくニュースと無縁で過ごした。
日々の感染者数(口に出して言うと確実に噛む)もどうなったのか知らずに過ごした。

この日記も今日で一区切りの一週間。
想像通りの地味な生活で、読み返すも公開に値するのかわからない。
コロナ禍の日記で賑やかで派手なのもなんだけど。

そういえば去年の8月に、45年間吸ってきたタバコを止めてみた。
夏の盛りのような日で、外出自粛ムードもあったので何か自分にイベントごとを作ろうと思い、「吸いたきゃ、また吸えばいいんだし」くらいの休煙が殊の外ここまで続いてしまっている。

夜遅め、仕事終わりに友人とバーで待ち合わせて「コロナん時って、大変だったよね〜」とか言いながらたわいのない話で一服くゆらす時までちょっとお休み。