『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』アレック・ケシシアン監督(1991年)

『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』アレック・ケシシアン監督(1991年)

 マドンナ。特にファンというわけではないし、ぜんぜん詳しくありません。十字架を燃やしたり、檻に閉じ込められながら歌ったり、なんか重苦しいパフォーマンスが個人的に好みじゃないというか苦手…。以前memorandomでマイケル・ジャクソンについて書いた時も、同じような書き出しだった気がする。
 でも1990年ワールドツアー中の様子を記録したドキュメンタリー映画『イン・ベッド・ウィズ・マドンナ』は大好き。ファンでなくても楽しめる、立派なエンタメ作品だと思うのです。

 欧米や日本を約4か月間かけてまわる大規模なコンサートツアーは、体調不良による公演中止や、公演中の技術ミス、ツアースタッフに降りかかるアクシデントなど、トラブルが盛り沢山。「VOGUE」が大ヒットした直後の、それはイケイケでやんちゃな32歳のマドンナは暴言・下ネタを乱発。前列が業界人ばかりで胸糞が悪いとマネージャーを一喝。楽屋に現れ「上手だね」と感想を言ったケヴィン・コスナーには中指を立てる。とにかくバックステージは、終始ピリピリ。

 このドキュメンタリーでは、ツアーを一緒に回る若いダンサー達が大々的にフィーチャーされている。やっぱり自身も元々ダンサー志望だったぐらいだから、スポットを当ててあげたいのかな。7人のダンサー中、6人がゲイ。1人だけいるストレートの子がいじめにあうと、我が子に接するようにダンサー達の仲をとりもつマドンナ。トロントでは警察から自慰行為を模するシーンをカットしないと逮捕すると公演前に警告され、それなりに動揺している姿も見ることができる。気分を持ち直すためにコーラスの女性陣と手を繋いで歌ったり。けっこう可愛らしい。キワドイ演出も芸術家の自己表現、どんなことがあろうとカットも変更もしない。と言い切るものの、父親に観られるのは妙に緊張してたりね。

 元々はツアーの記録フィルムとして企画されたものが、26歳の監督がマドンナの命令を無視してプライベートな時間もカメラを回し続けたらしい。ショーが始まる直前、マドンナはダンサー全員と手を繋ぎ輪になって祈る。出演者やスタッフをとりまとめるマドンナの言葉はなかなか感動的です。ザ・座長って感じで。

inbedwithmadonna