私のかけら 54  長谷部千彩

――これはかけら。季節のかけら。東京のかけら。私のかけら。

最近考えていること・1 今年やってみたいこと

年が明けて最初の打ち合わせ。
事務所スタッフYから「今年は、有料メルマガみたいなものをやってみたらどうですか」と提案を受ける。
実を言うと、課金制メルマガ/ブログのアイディアが浮かんだのは、五年ほど前のことだ。その後、やってみたいこととして、私が何度か口にしていたのを、Yは覚えていたらしい。
「最近、noteも流行っているらしいし、いいかもね。考えてみる」
私は黒いモレスキンを開き、白いページに青いペンで「ブログ 有料」と書き留めた。

課金システムのもとで書くというのは、アイディアというより、私の場合、願望に近いものかもしれない。と言っても、そこで収入を得たいということではない。それはあまり期待していない。
私が興味を持っているのは、お金を払ってでも読もうとしてくれるひとに向けて書くとしたら、私は何を書こうとするのだろう、ということだ。思い入れが深過ぎて紹介をためらう映画、幼い頃に経験した悲しかった出来事、自分を支えてきた言葉、普段はあまり書かない買い物の話、恋愛について、ひとと議論をする気はないけれど、納得いかないなあと思っていること(渋谷駅前の再開発など)・・・。誰もが読める場所への掲載を前提とするときには避けてしまう話も、読者が限られれば、私は書くのではないか。そんな気がしている。

家に帰って、課金制ブログのことをネットで調べると、たくさんの記事が出てきた。
ほとんどが、「多くのひとに読んでもらうためには」、そして、「どれだけ利益が得られたか」という内容だった。
私みたいに、課金制にすれば読者数がぐっと減る、そのことを活かした文章を書いてみたい、と考えるひとは、見つけることができなかった。

先週の午後、久しぶりにMさん会い、お茶を飲んだ。
日々、ぼんやり暮らしている私には、これと言って報告することがなかったけれど、せめて、と思い、Mさんに、今年、やってみたいことがあるんです、と、課金制ブログのことを話してみた。
すると、Mさんは私の説明に耳を傾け、それは是非やってみるといいよ、と優しく後押ししてくれる。そして、30人ぐらいのひとが集まってくれたらいいなあと思っているんです、それぐらいの感じで書いてみたいんです、と続けた私に、じゃあ、僕がその30分の1になるよ、と言ってくれた。思いもよらぬ言葉に驚くと同時に、とても嬉しく感じ、こういう喜びを得ながら書けるなら、読んでくれるひとが5人でも10人でもいいや、と私は思った。Mさんは、意欲を引き出すのが上手なひとだ。

もちろん、これからも、雑誌にもウェブサイトにも文章は書いていく。そのことに変わりはない。不特定多数の人に読んでもらうことも大事なことだと思うから。
つまり、課金制ブログというのは、自分の中での、ひとつの試み。経験してみたい環境、と言ってもいい。
ただ、実現させるとしても、すぐに、とは、行かないだろう。中途の状態の仕事がいくつもあるし、遅筆の私がコンスタントに更新できるのか、不安も少し感じている。
急ぐ話でもないし、ゆっくり考えていこうと思う。