――これはかけら。季節のかけら。東京のかけら。私のかけら。
9月×日 夜の呟き
昨夜は、ベッドにiPadを持ち込んで、眠る前に、細田守監督『バケモノの子』を観た。huluでの細田守特集配信が9月30日までだったから。『バケモノの子』は、夏にテレビで放送しているのを、既に観ている。でも、集中できなかったから、再挑戦(テレビを普段観ないので、CMを挟みながらの映画鑑賞が苦手です)。 二度目の『バケモノの子』の感想は、前回と同じ、画の美しさと動きの細やかさに感心、そして、バケモノたちの暮らす世界“渋天街”のシーンは映画らしくて面白い、だけど、後半、主人公の、人間界と“渋天街”との行き来が始まると、微妙な気持ちに・・・。映像はずっと綺麗で楽しいのにね。主人公が大学を目指す、という着地点が私には何とも。前半、あんなにイマジネーションの世界でワクワクさせてくれたのに――いや、勉強するのはいいことだけど――やけに向かう先が手堅くない・・・?
でも、大きなスクリーンで観たら、映像の迫力だけで十分満足できる作品なのかもしれない。iPadで観ている私が悪いのか? そして、今日は、『時をかける少女』を観た。私にとって、細田守さんの仕事で印象深いのは、『少女革命ウテナ』で絵コンテを担当された回のものだけど(樹璃ちゃんという、女の子を好きになってしまった女の子の話が良かった)、劇場作品では、『時をかける少女』が一番好き。物語がコンパクトにまとまっているから。やっぱり90分程度で終わる映画は、すっきりしていていい。最近の映画は、二時間超えが当たり前になっているけど、長いというだけで、私は気持ちが萎える。むやみに上映時間を延ばさないで欲しい、と思う。 アニメを観終え、寝ようとした頃、風がどんどん激しくなってきた。嵐も雷も、割と平気なほうだけど、窓を叩く凄まじい雨の音に、さすがに恐怖心が芽生える。一瞬、ツイッターで、「怖い」と呟いてみようかと思ったけれど、そうしたところで台風が去ってくれるわけでもなし、呟くのは止めに。そのままツイッターのタイムラインを眺めていると、渚ようこちゃんの訃報が。驚くとともに、ようこちゃんから仕事の相談を受けた日のことを思い出す。あれから20年近く経つ。ようこちゃんも私も若かったなあ・・・。時の流れの速さを感じる。
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10月×日 ダーティハリー4
『ダーティハリー3』をオーディオコメンタリー付きで観る。解説は、監督のジェームズ・ファーゴ。それほど面白い話はしていなかった。映画は制作された時代が反映されるもの、1970年代は、警察の暴力行為に敏感な時代だった(ハリー・キャラハンは、その対極にあるキャラクター)、男女同権や黒人の権利保護についても人々が関心を持っている時代だったので、『ダーティハリー3』にはそれが反映されている・・・など。『ダーティハリー』と『ダーティハリー2』はシリアスな雰囲気だったが、『ダーティハリー3』ではだいぶ軽くなっていると監督も認めていた。他には、銃撃シーンでは、血糊をどのような方法で飛ばすか、丁寧に説明していた。ざっと観直して、やはり『ダーティハリー3』は、前作、前々作に比べ、魅力が乏しいかなあ、と(私の感想)。監督も、予算がなかった、と何度も繰り返していたけど、画がテレビドラマっぽい。それと、敵のキャラクターが弱い気がする。倒す敵の個性が強ければ強いほど、主人公も栄えるというもの。その点、最初の『ダーティハリー』は強烈で良かった。 午後、打ち合わせ。いま、関わっている仕事、暗礁に乗り上げているではと心配していたが、そういうことではないらしい。ほっとした。 夜、『ダーティハリー4』を観る。撮影監督がブルース・サーティースに戻り、黒を強く出した画面に戻った。音楽もラロ・シフリンが復帰。クリント・イーストウッドは、50代に入り、なんだかシワシワしてきた。身長が193㎝あるから、強い刑事というイメージをなんとか保っているけれど、これで背が低かったら厳しいかも。背が高いって得ね。(以下、内容詳細に触れています) 今回のシリアル・キラーは女性。10年前、自分と妹をレイプした不良グループをひとりずつ殺し、復讐している(妹はショックで精神崩壊してしまった)。ハリー・キャラハンは、その連続殺人事件を担当、捜査を続けている。ひょんなことから、出会うふたり。ハリー・キャラハンは、彼女が犯人だと気づかず、心惹かれ、一夜を共にしてしまう。一方、自分たちが狙われていることに気づいた不良グループも黙っていない。彼女を探し出し、殺そうとする。そして、彼女は、不良グループのリーダー(一番タチの悪い奴)に捕まり、暴行を受け、絶体絶命に・・・というところで、ハリー・キャラハンが登場(ハリー、早く来て!という状態なのに、逆光を浴び、悠々と歩いて現れるので爆笑してしまった)。今回は、S&W M29 6.5インチよりも更に大きく強力な拳銃、44オートマグを使い、不良グループのリーダーを射殺、女性を救う。復讐とは言え、殺人に手を染めている彼女を、ハリー・キャラハンは、逮捕しようとする。しかし、彼女の“被害者の権利は守られないのか”という言葉に、連続殺人は、不良グループのリーダーの犯行だったということにして、彼女の罪を隠蔽するのだった・・・終わり。ものすごくざっくりまとめるとこんな感じ。うーん・・・。
というのも、被害者が加害者を復讐したいと思う。なるほど。それを実行に移す。なるほど。刑事も、被害者に同情し、犯行を見逃してやりたいと思う。なるほど。で、見逃す・・・って、いいの?刑事がそれやっちゃっていいの?“ダーティ”なハリーは、観客の願望に応えて、そういうこともやっちゃうよ、ということなの?でも、『ダーティハリー2』で、「納得いかない法律でも、変わるまではそれを守らねばならない」とハリー・キャラハンは主張していたよね?シリーズも続き、キャラクターがブレてきたのか、なんだかモヤモヤしたものが残る作品だった。
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10月×日 深い問題
『ダーティハリー4』をオーディオコメンタリー付きで観直す。解説は、映画評論家リチャード・シッケル。割と冷静な批評。いままでのハリー・キャラハンだったら、こういう行動はしないはずだよね、みたいなコメントも。 もう一度、通して観て思ったこと:・今回は、アクション映画というより、サスペンス映画。シリーズの中で、一番ハラハラした。
・でも、ハラハラしたのは、華奢な女性が連続殺人を犯すから、そして、女性が酷い目にあうシーンが多いからだと思う。
・それにしても、ヒロインが酷い目にあいすぎるような(ハリー・キャラハンを英雄にするために、女性に対する苛烈な暴力シーンが組み込まれているような気もした)。監督(クリント・イーストウッド)の趣味?死人も多くて全体的に雰囲気が重い。あまり何度も観たい映画ではないかも。
・今回は、犯罪行為に科される刑罰はどのくらいが相応しいのか、という問題が含まれていたけど、これって結構難しく、深い問題だなあと思った。被害者にとって満足できる量刑などというものが、そもそも無いのかもしれないし。それでも誰かが、この犯罪に対してはこれぐらいの刑罰というものを決めざるを得ないわけで。いままで刑法を勉強しようとするひとの気持ちがわからなかったけど、いまは少し理解ができる。
・44オートマグという拳銃、銃身がステンレス製で、綺麗に見えた。
・『ダーティハリー』シリーズ、いろいろな銃器が出てきて興味深いけど、観れば観るほど、銃は規制するべきという気持ちが強くなる。