――これはかけら。季節のかけら。東京のかけら。私のかけら。
11月×日 不思議な感じ
iPhoneでバスや電車に乗れるよう、二日前に設定を済ませたばかりなので(=iPhone7のWalletアプリにSuicaを登録したばかりなので)、バスの乗車口や駅の改札でiPhoneをかざす時、まだ少しドキドキする。ちゃんと読み取ってくれるかな、といちいち心配したりして。もちろん、いつも拍子抜けするほど軽く、読み取り完了の小さな音が鳴るのだけれど。いろいろなことが便利になるのは、不思議な感じ。そして、便利なことにあっという間に慣れてしまうのも、やっぱり不思議。人間の創造力と適応力は凄まじい。どんどん新しいものを作っては、どんどんそれらに馴染んでいく。人間の身体はさほど進化していないのにね。
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11月×日 慰め
週末は、お天気も良くて、楽しい連休になった。お友達とお茶を飲んだり、ラズベリーの苗を植え替えたり、久しぶりにリング綴じのノートを作って遊んだりもした。この頃、平日に細々と予定が入っているので、のんびり過ごせる休日が何よりの慰め。* * *
11月×日 11月のクリスマスツリー
打ち合わせの帰り、クリスマスツリーの前を通りかかった。電飾の光が眩しくて、思わず足を止め、写真を撮った。ここのツリーは毎年目にしている。なのに、なぜだろう、今日はひときわ美しく感じたのだった。カメラのシャッターを切りながら、ふと、一体私は何をやっているんだろう、と自問する。人生の後半は、できるだけ身軽な暮らしをしたい、そう考えて、この一年、随分と身の回りの物事を整理してきたけれど、果たしてそれが良い結果を招くのか、いまはまだわからない。欲を持つのも生きていればこそ、と思うこともある。混沌としているときのほうが、アイディアが湧いたりするのかも、と思ったりもする。でも、なんとなく、一度空っぽにした上で、もう一度、積み直したい、そういう気持ちになった。そして、そういう気持ちになった自分を信じてみたい、とも思っている。
いまの世の中、生活を広げていくほうが簡単で、削ぎ落していくほうが難しい。一年後、このツリーの前に立つときには、あのとき、難しいほうを選んで良かった、と思えるといいのだけれど。そう願いながら、肩にかけたトートバッグにカメラを納める。陽が落ちたばかりの西の空はまだ青くて、探したけれど、月は見当たらなかった。
今日も東京は良く晴れて、暖かかった。昼間は20度もあったらしい。明日も雨は降らぬという。
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11月×日 遠くへ行きたい
予報は外れ、今日は昼までぽつぽつと小雨が降っていた。私は駅で新幹線のチケットを受け取ると、コーヒーショップに立ち寄り、サンドウィッチのランチを済ませた。宿を予約したのは、真夜中の衝動。インターネットで観た紅葉の写真がきっかけだ。ここのところ、慌ただしい日々を送っていることもあって、一息つきたくなっている。仕事のほうは、10日もすれば一段落するだろう。そうしたら、受け取ってきたチケットを使って、すぐさま列車に乗るつもり。たった一泊の小旅行。それでもいい。いまは、とにかく遠くへ行きたい。スマートフォンで旅先の天気を調べる。東京に比べ、彼の地はだいぶ冷えるよう。ダウンジャケットにブーツ、マフラーを巻いていけばいいのかな。雨が降らないといいのだけれど。
甘いコーヒーを飲みながら頬杖をつく。窓の向こうはグレイの空。通りを行き交うひとの傘。私、少し疲れている。
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11月×日 新色の楽しみ
午後に予定が入っていたので、お昼前にSUQQUの新作発表会へ。使い易そうな彩りのアイシャドウパレットにも惹かれたけれど、綺麗なディープベリーのリップグロスがあったので、そちらを試す。
コスメティックって不思議だなあ、と思うのは、リップにしてもアイシャドウにしても、新色がいつも一番良く見えるということ。普段は、シンプルなメイクしかしない私も、次の春のテーマだという、グリッターの効いたカラーコレクションを眺めていたら、たまにこういうのもいいかも、という気分に。単純ですかね。
サンプルをいただき、表へ出ると、街路樹色づく秋の銀座。この頃、仕事のことで頭がいっぱいだったので、美しい色、美しいパッケージを目にして、いい気分転換になった。何度も書いていることだけど、私の場合、自分を明るい気持ちにさせてくれるのは、美味しいものより、やっぱり綺麗なものを見ることだなあ。
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11月×日 早寝遅起き
疲れている、と思ったら、何のことはない、風邪をひいていたみたい。金曜の夜、帰宅すると、頭はぼーっとするし、洟は出るし、なにしろ喉が痛かった。よってこの週末は薬を飲んで早寝遅起き。おかげで調子も戻って、疲れもだいぶ取れたように思う。
来週は、楽しみにしている旅行がある。それだけはキャンセルしたくない。紅葉が観たい。
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11月×日 鮫洲と青山
運転免許の更新をうっかり忘れ、失効させてしまったので、再交付の手続きへ。1時間講習を受ける。夜、八代亜紀さんのライヴを観に青山ブルーノートへ。相変わらずMC上手な八代さん。歌ももちろん良かったけれど。
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11月×日 きっといいこと
誰にでも胸にしまっている思い出というものがあると思うけど、今日は、この先、何年経っても、時々私の脳裏をよぎるのだろうなあ、と思うような感慨深い出来事があった。これからの私にはきっといいこと。でも、少し寂しい出来事。ありがとう。さようなら。ほっとしながらも、私の中のひとつの時代が終わったんだなあ、と複雑な気持ちで部屋を出る。生憎午後から小雨が降っている。傘を持たずに出てきた私は、濡れながら坂道を歩く。越えるべき11月のハードルも残り少なくなってきた。旅行まであと少し。肩にかけた鞄の中には新幹線の切符が入っている。* * *
11月×日 ドライヴの準備
朝、ジムに行った後、事務所へ。今日も山ほどの仕事をこなした。 この頃、やることが多く、気持ちがいっぱいいっぱいのせいか、家に帰って来ると呆けてしまう。机に向かっても原稿は書かず、ぼんやり。11月の山は今週越えるけれど、この調子の生活が春まで続く。そう思うと、正直なところ、内心不安。ちゃんと乗り切れるのだろうか、私。 でも、不安だけというわけでもない。いま取り組んでいることは、コツコツ続けてこそ成果が出るもの。同時に、私自身、どうしてもやりたいと思っていること。ひとに誇るようなことではないけれど、自分にとっては大事なこと。いまはまだあれこれ手をつけている状態で、まわりには理解されにくいけれど、きっと近い将来、人生の後半をドライヴし易くするために、時間をかけて準備をしていました、と言える日が来る。