フィギュアのあさみさん

最終回『フィギュアのあさみさん』

こんにちは、あらごんです。

前回は台湾にあるアートトイと雑貨のお店、something GOOD!のオープニングイベントに、新たに制作したあさみさんフィギュアとキャンバスアートのセットを出品し、完売したこと、そしてその直後、WOWORKSさんからあさみさんフィギュアの製品化を持ちかけられる…というところまでお伝えしました。

さて、最終回となる今回は、この連載の主役でもある、あさみさんの製品版フィギュアのゆくえ、そして現在の僕の状況についてお話ししようと思います。

something GOOD!のオープニングイベントのために一点モノとして自宅の3Dプリンターで出力した完全自作のあさみさんフィギュア。Bさんは、そのあさみさんフィギュアもWOWORKSで製品化したいと言います。
「Just a girl」と違い、上下スウェットの部屋着を着たキャラクターのフィギュアなんて、生産してしまって大丈夫なのだろうか!?欲しがるひとはいるのだろうか!?
あさみさんは、過去に唯一僕が商業作品として形にした漫画の主人公で、思い入れはありますが、あまり人気もなく、雑誌での掲載も1年で終了してしまったキャラクターです。

嬉しさよりも驚きと心配が勝ってしまい、何度も「本当に良いのか?」と念を押したのですが、彼らは絶対に大丈夫だから任せて欲しいと胸を張ります。
不安はあったものの、その熱意に打たれ、僕は、ふたつ目のフィギュア作品であるあさみさんの製品化に踏み切ることにしました。

それからは、製品版あさみさんフィギュアの完成に向けて、「Just a girl」同様、造形の細部や塗装の色等々、彼らと何度も意見を交わしました。
この頃は、「Just a girl」の新色ヴァージョンについてもオンラインで会議を重ねていたので、やりとりはほぼ毎日という状態です。

そして2019年12月、ついに完成したあさみさんフィギュア製品版がこちら。

「あさみさん」という名前はパッケージ裏面の漫画に載せる程度にとどめ、商品名は「Just a girl」シリーズの新作という形をとり、「Just a girl 2」としました。

まずは年末に開催されるWOWORKS主催のトイイベントで販売。その後、年明けには僕たちが販売できるよう、日本にも送ってもらうことに。もちろん今回もブリスターパッケージです。「Just a girl」の売れ行きが好調だったこともあり、なんと一気に3種類のあさみさんが制作されました!

いきなりこんなにたくさんの種類を作って大丈夫だろうかとも思いましたが、「Just a girl」でファンになってくださった方々のおかげで、あさみさんフィギュアも年末の販売イベントで無事完売。

そして年明け、製品版あさみさんフィギュアが我が家にやって来ました。

さて、このフィギュアをどのようにして販売するか…。
僕は、日本で最初に販売する場所を、もう決めていました。
ちょうど1年前に初めて手作りのフィギュアを展示・販売し、中国での製品化のきっかけとなったワンダーフェスティバル、通称ワンフェスです。

すでにワンフェスには参加申し込みを済ませ、販売スペースも確保してあります。
しかも、「ワンフェスでフィギュアを売る」とWOWORKSさんに伝えたところ、「だったらワンフェスに合わせた限定カラーも作りましょう」と言ってくださり、4種目のあさみさんも一緒に届けられたのです。

この黄色いスウェットを着たあさみさんの生産にあたっては、工場の職人さん達は春節を控えた繁忙期だったのに、僕たちがワンフェスで販売するのに間に合うように制作してくれたそうで、ただただ感謝するばかりです。

とはいえ、「Just a girl」の新色とあさみさんフィギュアが段ボール何箱分も一気に届き、家のリビングは大変なことに…。

こんなにたくさんのフィギュアを売りきることができるのか不安ではありますが、ここはWOWORKSさんの頑張りに報いたい!
そんな想いで、我が家の軽自動車に、積み込めるだけのフィギュアを積んで1年ぶりのワンフェス会場へと向かいました。

2020年2月9日。こうして迎えた2回目のワンダーフェスティバル、この1年の成果とWOWORKSさんの全面協力もあり、僕らの販売ブースはとても賑やかになりました。

お客さんはどれだけ来てくれるだろう…。
緊張しながら待っていると、なんと中国から「Just a girl」をいつも買ってくださるファンの方達が、わざわざ日本のイベントまで駆けつけてくれました!
そして、中国だけでなく、韓国、タイなどアジアの様々な国からも!
こんなに広く、僕たちの作品が認知されているなんて。
1年前、たった11体の手作りフィギュアの販売からスタートしたのにーー。
その日は、たくさんの方から嬉しい言葉をいただき、僕たちも拙い英語でたくさんの感謝を伝えました。
現在、新型コロナウイルスにより、このような大規模なイベントは日本では開催されていません。ですから、このワンフェスが海外のファンの方と直接交流できた僕らにとって唯一の場。今でも本当に大切な思い出として胸に刻まれています。
そして、「これからも良い作品を作り続けたい」という想いが、僕の中でより一層強くなったのでした。
 

2021年5月。
僕らは現在も順調に作品を出し続けることができています。

雑誌連載していた頃から応援してくださった方が買ってくださったり、「Just a girl」同様、「私に似てる」「彼女に似ている」という理由で買ってくださったり、おかげさまであさみさんフィギュアも新色を増やしました。

もともとが妻と趣味で始めたフィギュア制作。今はほぼ仕事になってしまい、プレッシャーを感じることもありますが、「自分たちが良いと思うものを信じて、納得いくまで作る」ということをこれからもモットーに活動していきたい。プロの方から見れば、アマチュアリズムな考えかもしれませんが、この姿勢は貫きたいと思っています。

最後になりましたが、雑誌掲載が終わってからも、あさみさんというキャラクターを描く場を提供してくれたmemorandomには本当に感謝しています。
あさみさんを漫画とはまた違った形で、世に送り出すきっかけになりました。

そして、最後まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
今後、もしどこかで僕のフィギュアを見かけた時は、この連載を通してお伝えしたドタバタな日々を思い出してもらえたら嬉しいです。

2021年5月28日 あらごん