フィギュアのあさみさん 第8回

第八回『「Just a girl」製品版、ついにリリース!』

こんにちは、あらごんです。
前回はWOWORKSさんと共同で制作したオリジナルフィギュア、その名も「Just a girl」がついに完成し、上海ソフビフェスティバル(通称SSF)に初出品されるというところまでお伝えしました。
今回は、いよいよ販売が始まった「Just a girl」のイベントでの様子から振り返りたいと思います。


SSF当日、とうとう「Just a girl」の発売日がやって来ました。この日の販売数は白いTシャツと黄色いTシャツのフィギュアが約100体ずつ。手作り版では何カ月もかけてようやく80体作ったというのに、これよりクオリティの高いフィギュアが短い期間で200体も作れてしまうのだから、さすが玩具会社です。

僕は現地に行くことはなく、日本でWOWORKSさんからの報告を待っていたのですが、お昼過ぎ頃にInstagramにメッセージが入りました。
差出人は、以前手作り版フィギュアを買ってくださった中国の方からでした。一体なんだろうとメッセージに目を通すと、「あなたのフィギュア、開始早々に売り切れたよ」という驚きの内容でした。一瞬事態が呑み込めませんでしたが、その方が「買えたよ」と購入したフィギュアの写真を見せてくれて、「あっ、本当に売れたんだ」とようやく実感が湧きました。

夜にはWOWORKSのBさんからも連絡があり、正式に完売したとの報告をいただきました。
その後もSSFでフィギュア買ってくださった中国の方達が、Instagramに「Just a girl」の画像を投稿してくださり、本当に嬉しかったです。遠く離れた中国でこんなことになるとは、3Dプリンターで手作りフィギュアを作っていた頃には想像がつきませんでした。あのときのワンフェスでたった11体しか販売しなかった手作り版フィギュア、そのうちの1体をMさんが買ってくださったところから、こんなにも広がっていくなんて本当にびっくりです。

そんなSSFからしばらくして、WOWORKSさんから、今度は「Just a girl」の色違いバージョンを新たに2種類作るというお話をいただきました。 しかし、ここでひとつ疑問が生まれます。
「SSFで売り切れてしまった白Tシャツと黄色Tシャツのフィギュアは今後どうなるのだろう?」
素朴な疑問をBさんにぶつけてみたところ、なんともう白と黄色は生産をしないとのこと。SSFではすぐに売り切れて、その後も「買えませんでした」「次はいつ販売するの?」と何人もの方からInstagram経由で質問されていたこともあり、てっきり白と黄色も追加生産しながら、新色を生産するのだと思っていたので、まさかの回答でした。

この時点で僕は、中国やアジアにおけるアートトイ業界をよく理解していませんでした。というのも、Bさんの解説によると、アートトイを買うコレクター達は限定数があるから価値を見出すので、もし仮に同色のフィギュアをこの先何体も作り続けてしまうと、あっという間に彼らの熱は下がり商品価値が落ちてしまうというのです。現に、あるアートトイ作家の方が同じカラーリングの同じ作品を販売し続けていたところ、それらは「いつでも買える」という安心感からか、当初は人気があったにもかかわらず、コレクターの間の熱は冷めてしまったそうです。

僕個人としては「欲しいと言ってくださる方全てに行き届くよう、1種類のものをたくさん作って欲しい」という想いはありました。しかし、確かに商品価値自体が下がってしまうと、この先フィギュアを作ってもらうこともままならなくなってしまいます。
また、「アートトイ」、つまり「アート」の部分で言うのなら、確かに同じものを作り続けるのは少し違うような気もするし、Bさんの提案は、アートトイ制作という部分では間違っていないように思いました。
つまり、この活動を継続させていくには、コレクターの方達が集めたくなるような新色、つまり新たな作品を作り続けるしかないのです。
そこで僕は、アートトイがそういうものだというなら、自分自身考え方を変えて、買えなかった方達には「あ、こっちの方が欲しい」と思ってくれるよう、またコレクターの方達には「あ、これも欲しい」「集めたい」と思ってくれるような新作を作っていこうと決意しました。

こうして出来上がったのが、もともと手作り版にあった黒いTシャツを製品版にしたものと、新たに作ったグレーのTシャツの「Just a girl」です。

さて、次の販売イベントは2019年8月16~18日に北京で開催される北京トイショー(通称BTS)です。
こうして文章を書いていて改めて思いますが、中国は大きな規模のアートトイのイベントが本当にたくさんあります。それでだけでも、アジアのアートトイ文化への熱の高さが伺えます。

そして新色の「Just a girl」が無事生産され、迎えたBTS前日、イベント準備中のBさんから設営の様子を写した写真が送られてきました。

なんとWOWORKSさんの販売ブースのパネル全体に、僕の絵が大きく貼られていたのです。自分の描いた絵が、かつてここまで大きく印刷され、しかもそれが大きなパネルに貼られたことがあっただろうか…。いや、絶対ないです!初めてのことです!

どうやらBさんも僕を驚かせたくて、いままで黙っていたらしいのですが、まんまとやられました。しかし裏を返せば、WOWORKSさんの「Just a girl」に対する期待度の高さもわかってしまいました。
「これは絶対に期待に応えないと…」
商品が出来てしまっている以上、現地に行けない僕にできることといえば、Instagramで販売を告知するくらいですが、とにかく成功を祈るしかありません。

そしてイベント当日、またBさんから1枚の写真が送られてきました。

写真には、たくさんの人たちが、WOWORKSブースに集まっている様子が収められていました。
もちろんWOWORKSさんでは、僕以外にもすごいアーティストの方達の作品を制作・発表されているので、100パーセント「Just a girl」を求める人だかりではないのですが、たくさんの人が「Just a girl」を購入し、すぐに完売したと興奮気味にBさんは教えてくれました。

SSFにつづき、BTSでも無事完売。さすがの僕もこれはまぐれではないと確信しました。

僕たち夫婦が作ったフィギュアが、こんなにも中国の人たちに支持されるなんて夢にも思いませんでした。
しかし、この結果も、最初のワンフェスで販売した手作りフィギュアを「初心者だから」「はじめて作るものだから」と考えず、1体1体完全に塗装した状態まで仕上げ、さらにそのパッケージにもこだわり抜き、全力で作ったからのものではないかと思います。だから、あのときMさんが手にとってくれたのだと思うし、WOWORKSさん、中国の方達にもその頑張りが届いたのだと思います。
やはりお金をいただく以上は、自分にできる全力を見せることが大事なのだ、最初から――そのことを、このフィギュアを通して改めて痛感させられました。

こうして商品になった「Just a girl」ですが、ここまでくると僕自身に新たな野望が生まれてきます。「これを日本でも売りたい」という野望です。

こんなことになると思わなかったので、契約時には「1体サンプルがもらえれば良いです」と言ってしまったけれど、今さらそんな無理が言えるのだろうか…。
実は、BTS開催前から、僕は、Bさんに「在庫の一部を日本でも売ってみたい」と持ち掛けていたのでした。
果たして「Just a girl」は日本でも発売出来たのでしょうか。その様子は次回お伝えしようと思います。

それではまた来月!