第七回『製品版の完成を目指して』
こんにちは、あらごんです。
前回は上海トイショーでのフィギュアの展示・販売を経て、中国の玩具会社WOWORKSさんから「このフィギュアをうちの会社で制作・販売したい」という連絡をいただき、契約を結ぶというところまでお伝えしました。
今回はいよいよ、製品版フィギュアの制作がスタートします。
こちらの写真は前回も載せましたが、まずは僕たちが先方に送った手作り版フィギュアを元に作っていただいた製品版サンプル。
このままでもよく出来ているのですが、形やバランスへの僕たちのこだわりを伝えるために、細かい修正指示を入れた画像ファイルを作成し、制作担当者であるWOWORKSのHさんと制作・販売を総括されているBさんにそれぞれ送信しました。
ちなみに今回からはWOWORKSさんの複数の担当者と頻繁にやりとりをすることになるので、「LINE」ではなく「WeChat」という中国のアプリでメッセージや画像のやり取りをしています(中国だとリアルタイムにやり取りする場合、WeChatの方が便利なのだそうです)。
提出からほんの数日後には、Hさんから修正指示が反映された立体物の画像がWeChat経由で送られてきます。
更に修正したいところに、再度指示を入れた画像を作成し送信、それをまたWOWORKSさんが立体で修正…といった具合に調整が進んでいきます。
原型が出来上がった後も同様に、塗料の色選び、顔のパーツやTシャツの柄の作成、眼鏡のディテールや素材、パッケージのデザインに至るまで、様々な箇所をHさんと幾度ものやり取りを重ねて、手作り版からクオリティアップさせていきました。
製作期間はおそらく3カ月程度でしたが、複数のやり取りを並行していたので、ほぼ毎日WeChatでHさん、Bさんと打ち合わせをしました。
二人ともとても熱心な方で、気になることがあったり、進捗が少しでもあると平日でも休日でも即座に連絡をくれます。
いつもだと外出先や夜遅くに仕事先から連絡が来ると、正直面倒くささが勝ってしまいますが、「自分たちの趣味で作ったフィギュアの製品版を作る仕事」となると何もかもが新鮮で楽しいので、外出先でも深夜0時過ぎでも苦になりません。プロ野球観戦中に連絡が来て、試合そっちのけで打ち合わせなんてこともありました。
僕の英語力が低いので、こちらの言いたいことを100パーセント伝えるのはなかなか難しいのですが、その分シンプルな言葉でのやり取りが多いので、それも自分には合っていると思います。僕が過去に仕事をしてきた日本での仕事ですと、形式的な挨拶や遠回しな言葉、曖昧な表現というものが多かれ少なかれあったのですが、中国のWOWORKSさんとのやり取りではそういったものが一切なく、お互いに遠慮なく意見を交わすことができました。
またHさんもBさんも仕事は熱心ですが、とても明るい方達なのでOKやThanksのあとには猫や犬のオモシロgif画像を流してきたりして、自分もその画像を使って返信したり、フレンドリーに進められたのもよかったです。
最初の頃は僕が遠慮した物言いをしていた部分もあったのですが、「私たちはあなたをリスペクトしているので、もっと遠慮なく指示してほしい」と言っていただいたので、こちらも心を開いて希望を伝えることができました。
これはInstagram経由でフィギュアを買ってくださった方や、仕事を依頼していただいたWOWORKSさん以外の企業の方とお話した時も感じたのですが、アジアではアーティストファーストな土壌ができていて、だからアートトイという分野がこんなにも発展したのではないかと思います。
僕たちは、元々が趣味で作っていたものなので、自分たちのことをアーティストだとは思っていませんが、リスペクトし合った関係だと、今回のように満足度の高い制作ができるのだなと感じました。
少し話がそれてしまいましたが、こうして3ヵ月のやりとりを経て出来上がったフィギュアがこちらです。
白いTシャツだけでなく、上海トイショー限定で展示・販売した黄色いTシャツの子も一緒につくりました。見た目は手作り版より少し大きくなっただけに見えますが、細かいところで色々とバージョンアップしています。
一番大きな変更点は、手作り版では頭の部分は接着剤で固定したため、回すことができませんでしたが、製品版はマグネットが内蔵されており、首が回るようになっています。
マグネット内蔵なので回すだけでなく、頭を取り外すことも可能になったので、別のカラーリングのフィギュアが出た場合、頭を交換することで着せ替えという要素も楽しめるようになりました。
更にスニーカーの裏の部分には、WOWORKSさんと僕たちのディーラー名である「フツーにカワイイ」をモジって「222kawaii」と名付けたブランド名のロゴを入れていただきました。
こうしてロゴが入るととても商品感が出てきてワクワクしてきますね。
そしてこだわりだったブリスターパッケージ。手作り版ではフィギュアが収納されているプラスチック部分は両面テープで固定していたため、開封後のブリスターは破損してパッケージとしては使い物にならなかったのですが、製品版では開封した後でもパッケージが破損せず、ブリスターにフィギュアを自由に出し入れできる構造に改良していただきました。
これは僕たちの手作りだと絶対にできない部分なので、WOWORKSさんにお任せして本当によかったと思っています。
ちなみにこれらの商品写真は、2019年に上海で開催された「上海ソフビフェスティバル」通称SSFの開催前日に上海のビジネスホテルで撮影されたものです。
このSSFで初めて製品版のフィギュアを販売する予定だったのですが、生産がギリギリだったため、WOWORKSのスタッフの皆さんが夜を徹してパッケージ詰めをしている現場から写真を送っていただきました。
そして話はこの写真より数日前に遡るのですが、僕たちは大事なことを決めないままフィギュアの完成を迎えようとしていました。
それはBさんがポツリと聞いてきたところからはじまりました。
「ところでこのキャラクターは何という名前ですか?」
なんということでしょう。ここまで奥さんと二人、駆け足でフィギュア制作をしていましたが、このキャラクターにちゃんとした名前を付けていなかったのです。
あえて言うならワンフェス参加時に決めたディーラー名「フツーにカワイイ」から取って「フツーにカワイイフィギュア」としたかったのですが、さすがにそれではダメだと言われてしまいました。
いわゆるハッシュタグを付けられるようなキャラクター名があった方が、アートトイ好きの方達がSNSで見つけやすいので、ちゃんとした名前を付けた方が望ましいとのこと。
僕も奥さんもモノをつくることは好きですが、何かに名前を付けたり決めたりするのは苦手なので、キャラクターのネーミングは難航しました。
名前を決める二人の会議は夜遅くまで続き、どういういきさつで決まったのかは全く覚えてないのですが「のりポン」という名前にしようということになりました。
「のりポン…うん、のりポンで決まったね」
そんな感じでお互いなんとか自分を納得させて眠りについたのですが、明け方に奥さんが突然僕を起こし、「あれから色々考えたけど、やはりのりポンはまずいと思って英語でカッコいい名前を考えてみた」とのことで、奥さんが寝ずに考えた「Just a girl」(ただの女の子)という名前が誕生しました。
正直僕も「のりポン」はどうかと思っていたので、カッコいい名前を土壇場で付けることができてよかったです。
という訳で、あとはSSFでこのJust a girlがアートトイ好きの方達にどのような反応をいただけるか、WOWORKSさんからの報告を待つだけとなりました。
最初は僕たちが自己満足で作り始めたフィギュアですが、ここまでしていただいたWOWORKSさんの為にも一定以上の結果は出て欲しいと心から思いました。
次回はSSFでの様子とその後をお伝えしようと思います。それではまた来月!