第三回 『フィギュア完成までの制作過程』
こんにちは、あらごんです。
今回は、導入した3Dプリンターを使用してのオリジナルフィギュアの制作~完成までを振り返りたいと思います。このパートはとても長くなるので、かなり駆け足で振り返りますがご了承ください。
前回、簡単な猫の立体物を3Dプリンター出力したので、いよいよ本番である僕のオリジナルキャラクターの造形です。
と言っても、いきなり僕の漫画の主人公『あさみさん』を制作するのではなく、まずはこのフィギュアのために温めていたオリジナルデザインのキャラクターで作ることにしました。
それがこちら。
僕がよく描く「丸メガネでボブの女の子」をベースに、嫁が好きな「一昔前の大きめなシルエットのTシャツ」と「ハイウエストのヴィンテージデニム」、そして「ハイカットのキャンバススニーカー」を組み合わせたものです。
特に服のラインに関しては、自称古着マニア&Tシャツマニアの嫁が、キャラクターデザインのラフから3Dモデルに至るまで徹底的にこだわりました。
正直、このTシャツのラインさえ思った形になれば、もう悔いはないというくらい力が入っています。
3Dモデルを作ってしまえばあとは3Dプリンターが出力してくれるので、出力しては修正、修正しては出力という作業を何日も繰り返し、最終的にはこのような立体物ができました。
フィギュアのサイズが小さいため、眼鏡は3Dプリンターで出力できませんでしたが、とりあえず大まかな原型はこれでできました。
実はキャラクターラフを完成させる前の段階から3D出力していたので、それらを含めると完成までに本当にたくさんの立体物が出力されました。写真は途中過程で出力されたフィギュアの一部です。
右へ行くほど改良されていきます。見比べてみると、最初にラフを描き起こす作業が重要だということがわかりますね。
こうして3D出力されたフィギュアですが、当初の目標である「オリジナルフィギュアをつくってイベント販売する」を実現するには、やらなければならないことがまだまだあります。
これを販売するには、まず「原型」と呼ばれる完全な立体物を製作し、それを「複製」して商品にしなくてはなりません。その「原型」を作るためには、この3D出力されたフィギュアを「複製」することを見越して4つのパーツに分割し、さらにそれらを磨き上げる作業をします。
3Dプリンターから出力したままですと、最新の機種ではかなり滑らかな表面に仕上がるものの、それでもまだ表面は3Dプリンター出力品特有の凹凸があります。ただこの作業は、子供の頃からプラモデル制作を多少は嗜んできたので、3Dプリンターを扱うほど苦労はしませんでした。
独自にネットで調べ、模型専門店で買ってきた「パテ」「ヤスリ」「サーフェイサー」といった道具を使って細かな凹凸を埋め、表面をツルツルになるように根気よく磨き上げたものがこちらです。
この磨き作業と並行して、3Dプリンターでは出力しきれなかった靴紐部分やシルエットとして捉えて満足いかなかった細かな部分をパテで修正しています。
そして分割した原型を仮で組み立てるとこのようになります。
上の方でお見せした出力したままの写真に比べると、かなり表面がツルツルしてるのがわかります。
この原型を今度は「複製」しなくてはならないのですが、この複製作業は専門的な知識がないと失敗も多く、自分でやるのは難しいことがわかったので、思い切ってコストはかかるけど綺麗に仕上げてくれるプロの複製業者さんにお願いするとこにしました。
そして待つこと約1ヵ月、複製業者さんから送られてきたものがこちらになります。
1体作るのにあれだけ時間がかかったものが、大量に複製されて戻ってきました。ちなみにこの素材は3Dプリンターで出力される「フィラメント」ではなく、一般的なフィギュア(ガレージキット)でよく使用されている「レジン」という素材になっています。
という訳で、このレジンのフィギュアを試しにこのままの状態で、1体仮組みしてみました。
少しづつですが売り物っぽくなってきた気がします。
ちなみにこの複製されたものが届くまでの一ヵ月間は、フィギュア販売に向けて別の作業を並行して行っていました。このフィギュアを商品として販売するためのパッケージ制作です。
パッケージデザインについては、中野ブロードウェイに何度も足を運び、そこで売られている様々なおもちゃを観察し、「こんなのが良い」「あんな風にしたい」等々議論を重ねた結果、アメトイ風のブリスター形式を選びました。
こうして出来上がったパッケージに先ほどの仮組みしたフィギュアを入れるとこのような感じになります。
この台紙は印刷会社さんにお願いして制作したものですが、フィギュアが収納されているプラケース部分は、ジャストサイズのものが日本中どこを探しても売っていなかったので、アメリカのamazonで購入し、さらにそれをひとつひとつハサミで改造しました。
ここまできたら完成まであと一歩。次はこの複製されたレジンフィギュアを塗装していきます。まず塗装の前に、レジンの汚れや油膜を落とすため中性洗剤に浸けた後、一つ一つ丁寧にブラシで洗います。
この作業をきちんとしないと、塗料のノリが悪くなってしまうので手を抜けない箇所ですが、これだけのパーツ数だとなかなかに大変です。
洗ったパーツを乾燥させたら、いよいよ塗装です。色々調べた結果、「ファレホ」と呼ばれる水溶性アクリル塗料が、匂いもほとんどなく、ペットを飼っている環境にも優しいと評判だったので、こちらの商品を選びました。この「ファレホ」で一つ一つ筆で塗装していきます。
塗装後によく乾燥させて接着剤で組み立てます。
そして最後の仕上げで眼鏡を付けるわけですが、この眼鏡部分はその小ささからどうしても3Dプリンターで綺麗に出力できないため、フィギュア制作開始当初からずっと悩んでいました。
しかしこの眼鏡問題も僕がSNSで弱音を吐いていたところに救いの手を差し伸べてくださる方が現れ、見事に解決してくれました。レーザー加工でフィギュア用の紙製の眼鏡、通称「ペパクラ眼鏡キット」を制作されている「白船工房」さんです。
この白船工房さんの「ペパクラ眼鏡キット」は、小さなカード状の紙から眼鏡が切り離せるようなっていて、組み立てると簡単に小さな眼鏡ができあがるというクオリティの高い商品でした。
同封の説明書に従い組み立てた小さな眼鏡を筆で塗装。乾燥した後に瞬間接着剤で眼鏡を硬化させると見事にフィギュア用の小さな眼鏡が出来上がります。はじめてこのキットで眼鏡が出来上がったときは、こんなに素晴らしいものがこの世の中にあるのかと感動しました。
出来上がった眼鏡を、トップコートで艶出ししたフィギュアに瞬間接着剤で慎重にくっ付けて、ついにオリジナルフィギュアの完成です!
眼鏡が加わることにより最初のラフ絵に近い感じになり、自分たちとしてもとても満足のいくものが出来上がりました。
これを先程のブリスターパッケージに入れて正真正銘の完成版です。
あとはイベントで販売するのみ!という段階まできました。
これまでずっと言っていませんでしたが、無謀にも僕たちは、3Dプリンターが到着する前に、フィギュアの販売イベントへの参加を申し込んでいました。
つまり、イベントまでに「絶対にオリジナルフィギュアを製作、販売しなくてはならない」という状況だったのです。
駆け足で作業を振り返ってきましたが、ここに至るまでにすでに約4カ月かかっています。そして、なんとこの時点で申し込んだイベントまで残り数日しかありませんでした。フィギュア自体は完成しましたが、今度はこの残り日数を使って、1体1体上記の工程をこなし、それなりの販売数を用意する必要があります。
考えただけでも気が遠くなりそうですが、販売物は間に合ったのか?そして初のイベント参加はどうなったのか?この辺りを次回お伝えしようと思います。
それではまた来月。