第4回 町田のうまい差し入れ
2015年に僕の生まれ故郷・東京都町田市に「まほろ座MACHIDA」というライブレストランがオープンした。
町田駅前にもライブハウスはいくつかあったが、グランドピアノがあって食事もできるようなライブレストランは初めてだった。「町田のブルーノート」と、ひそかに呼ぶことにした(ちなみに「まほろ」という名前は町田を舞台にした三浦しをんさんの小説「まほろ駅前多田便利軒」に由来する)。
翌年、知り合いの紹介で初めて出演させてもらい、その後もときどきイベントなどに呼んでもらえるようになった。
いつか「まほろ座」でワンマンライブをやりたい、という思いは6年後の2022年にかなった。アルバム「うた、ピアノ、ベース、ドラムス。」リリースを記念してワンマンライブを開催。アルバムのプロデューサー・小西康陽さんをゲストに迎え、チケットは完売。満員の客席には僕の家族や親戚、地元の友人の姿もあった。
さて、小西さんやバンドのメンバーに町田の魅力を伝えるために何か地元のうまいもの、もしくはB級グルメを差し入れで持っていこう、と思い、まず浮かんだのが、町田仲見世商店街にある「マルヤ製菓」の大判焼だった。昔ながらのアーケード街として知られる町田仲見世商店街の入口にある「マルヤ製菓」は大判焼が有名な和菓子店。ここの大判焼はとにかく種類が多く、そして「ラザニア」「ポテマヨ」「チーズタッカルビ」など、他では見られない「食事系」の大判焼が食べられる。もちっとした皮の部分にはほのかな甘みがあり、それぞれの「具」のおいしさを引き立ててくれる。どれを選んでもハズレなし、なのだ。もちろん甘い大判焼も種類豊富で、「クリームチーズ」や「フォンダンショコラ」など、ひとひねりあるものばかり。そしてもちろん、ハズレなし。差し入れに何種類もの大判焼を買っていけば、話題性も十分。
町田のうまい差し入れ、もうひとつ思い浮かんだのが、こちらも和菓子だが町田の老舗「中野屋」。おはぎや大福、みたらし団子、赤飯やいなり寿司などを揃えた、正統派の和菓子店。僕も子供の頃から親しんできた。
実は幼い頃はあんこを使った和菓子があまり好きではなかったのだが、そんな僕のオススメは「すあま」だ。控えめな甘さ、もちもちした食感、驚くほどの柔らかさ、大人になってからあちこちですあまを食べたが、「やはり中野屋が最高」と思えてしまう。ちなみに小西康陽さんも絶賛されてました。
最後に、ひとつ気をつけていただきたいこと。むかし町田の商店街は水曜日になると、ほぼ全てのお店が定休日で、街は閑散としていた(その頃は確かデパートも水曜日が定休だった)。
さすがに今はそういった慣習はなくなったが、老舗のお店だと、昔から変わらないところも多く、「マルヤ製菓」も「中野屋」も水曜日が定休日。町田の老舗を探訪するなら、水曜日は避けて下さい。
イラスト:伊藤敦志