会えない時はいつだって

矢舟テツロー

第3回 東急百貨店本店

矢舟さん

渋谷の東急百貨店本店が今年(2023年)の1月末に閉店した。
僕にはまったく縁のない場所であったが、一つだけ思い出がある。

2021年12月に通算7枚目のアルバム「うた、ピアノ、ベース、ドラムス。」をリリースした。
実に6年半ぶりとなるソロ作品は初めて小西康陽さんにプロデュースしていただき、まさに「起死回生」の一作だった。

2021年2月、アルバム制作に向けた最初の打ち合わせが渋谷で行われた。
関係者四人での話し合いが終わり渋谷駅に向かって歩き出したが、小西さんと二人で曲についてもう少し話そうかということになった。

小西さんの後について行く形で東急本店内の喫茶店に着いたが、客席は満席だった。
さてどうしよう、となったが小西さんから「屋上に行きましょうか?」と言われ、ついて行った。

初めて行った東急本店の屋上には人工芝とベンチと自動販売機しかなく、平日の昼間だったせいか客は5〜6人程度だった。
ベンチに並んで座り、缶コーヒーを飲みながら1時間ほど話した。
曲についての打ち合わせ、といってもまだ具体的には何も決まっていなかったので雑談に近い形で音楽の話をしたが、その流れで小西さんから「矢舟さんは必ず(音楽の世界で)残るはずの人だから」と言われたのを覚えている。
その言葉はとても嬉しくて、その後の自分の励みになっている。

打ち合わせのほんの数日後、東急本店が閉店するというニュースが流れた。
また今度一人で行ってみようかな、と思っていたのだが結局あの日が最初で最後になってしまった。

つい最近、小西さんと新しい作品についての打ち合わせをした。
小西さんが待ち合わせ場所に指定したのは、工事用のフェンスが張り巡らされた東急百貨店本店の前だった。

イラスト:伊藤敦志

矢舟テツロー YAFUNE TETSURO シンガーソングライター/ジャズピアニスト www.yafune.com

① 東京ボンベイ ( キーマカレー ) / 恵比寿

 昨年までサラリーマンを36年間やっていました。週に5日は満員電車に乗って会社に行く。苦痛な時間ですが、食いしん坊なので“今日のランチのこと”を考えて、耐え忍んでおりました。今回からはじまる新連載は、その“ぼくが9,000回以上車中で楽しみながら悩んでいた気持ち”をコンセプトにしました。題して「食いしん坊の会社員が、 20日に一度は食べに行きたくなるランチ店」。毎回一軒、推しメニューとともに紹介していきます。記念すべき第1回は恵比寿のカレー店。店の名前は【東京ボンベイ 恵比寿ガーデンプレイス店】です。猛暑はスパイスの効いたカレーを欲しますからね。ぼくが足繁く通っているカレー屋さんに【デリー(上野店/銀座店)】がありますが、こちらはその流れをくむ店。千葉県柏にある1963年創業の名店【カレーの店 ボンベイ】の東京支店のひとつです。日本人の味覚に調整したインドカレー店だと思います。ですから、あの激辛旨味のカシミールカレーもあるし、インドも、コルマもある。ですが、ぼくはこちらでは「キーマカレー」を注文します。鶏挽肉を使っていてヘルシーだし、香り高いスパイス使いが最高です。ドライ系のキーマを出す店も多いですが、こちらはルー系。辛いのがお好きな方は、店員さんに食券を渡すときに「赤キーマで」とお願いしてください。時間があるなら、近くに東京都写真美術館もありますよ!恵比寿近くで打ち合わせの際はぜひこちらに行ってみてください。

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