渋谷駅近く、繁華街の一角の居酒屋。チェーンというほどではないけれど他にもいくつか店舗はあるらしい。名物は鶏の手羽揚げで、手羽揚げ食べ放題に飲み放題をつけて 90 分で 3 千円弱。ある時期は毎週のように通っていて、毎回 20 本近くは食べているので、月に 80 本、なんなら 100 本近く手羽を食べていたことになる。
1人客はもっぱらカウンターに案内される。足元のかごに鞄を入れて、本を取り出す。まずはビール。しばらく通ううちに、何も言わなくても手羽が出てくるようになった。ビールとチューハイを飲み干して、お代わりの手羽を揚げてもらう間に、かたわらの本を開く。
この仕事についてから、小説があまり読めなくなってきて、つい新書やノンフィクションを選んでしまう。この店の向かいには書店があり、そこで買ってきた新刊の新書をお供にすることもあった。頭が少しボンヤリしてきて同じ行を何度も追うようになったら、お開き。いくつかの季節が過ぎ、だんだん若い客が増えてきたころから、何となく足が遠のいてしまった。
脂の染みがついた数冊の本を眺めながら、久しぶりにちょっと味の濃い特製ダレの手羽を食べようと思った。まだ、読み終わっていない本があるのだ。