昨年から月に一度のペースで京都通いを続けている。急いでいないので「のぞみ」には乗らず、「こだま」のグリーン車で3時間半かけてゆっくりと。好きな食べ物や飲み物を用意して乗り込む。乗客はたいてい少ない。カバンから本を取り出す。ちょっと広めのシートを倒して横になってページをめくると気持ちよく本の世界に没入できる。途中で眠くなれば、そのまま居眠りするのもいい。
中学から電車通学してきた。ガタンゴトンとレールの音を聞き、電車に揺られていると、かえって読書に集中できる。気に入っていたのは品川から京浜急行で自宅があった京急蒲田までの道のり。特急に乗れば3駅8分のところ、始発の各駅停車に乗り、10駅20分ほどを読書の時間にあてた。早く家に帰って、家で本を読めばいい、とは思わなかった。春や秋には、すいている各停で午後の陽ざしを浴びて本を読むのが心地よかった。
「こだま」のグリーン車での“各停読書”。若いころに経験した“各停読書”とは違い、時間も気持ちもゆったり過ごせる。なんとも格別な味わいだ。
斉藤典貴 SAITO NORITAKA 編集者
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