私が本を読む場所は電車です。長い電車の先頭車両。私が利用する時間はまだ女性専用車両なので比較的空いていて、ほとんどの場合、席に座れます。私は好きな曲を一曲繰り返し聞く習慣があります。神奈川から東京への間、毎日一曲、「今日はなんの気分かしら」とお気に入りリストから選び、AirPodsのノイズキャンセリングモードを使い、それから本を読むのです。始めは聞こえていた今日の一曲も、物語に集中しだすとだんだん聞こえなくなり、ふと顔を上げると乗り換えの駅。後ろ髪を引かれる思いですごすごと満員電車の丸の内線へ向かいます。そしてそこには大抵、同じ電車から乗り換えの同期がひとり。「おはよう」と一言。私の一日が始まります。