正直に話すと、僕のような無骨な人間が、キラキラと煌めく優美な音のする楽器を演奏すること自体、あまり相応しくないのではと思うこともある。
僕は5才からピアノ教室に通い始め、小学生の時に兄の本棚にあった小澤征爾の「僕の音楽武者修行」という本を読んで感動し、その思いを卒業文集に書き、中学は迷うことなく吹奏楽部に入った。県大会やコンクールなどを目指すような本気の部活動だったこともあり、当時はクラッシックに没頭し過ぎて他の音楽が全く耳に入って来ない時期があった。
そんなある日、たまたまTVで『ブルース・ブラザーズ』という映画を観た。レイ・チャールズ演じる盲目の楽器屋のオーナーが拳銃を持って登場し、見たことものない鍵盤をとても楽しそうに弾く姿を見て、心の底からマグマのようなものが湧きあがった。生まれて初めて雷に打たれたような感覚というか、熱い電流が身体中を駆け巡った。それが僕にとってのローズとの最初の出会いだ。