会えない時はいつだって

矢舟テツロー

今年の夏、電子レンジと炊飯器が立て続けに動かなくなってしまった。
どちらも同じ時期に購入してもう15年近く使い続けていたので、いよいよ寿命が来たようだ。

電子レンジのない暮らしは、なかなかきついのではないか?
トースター機能付きで毎朝パンを焼くのにも使っていたのでなおさらだ。
早く新しいものを買わなくては、と思ったものの、それなりに大きな買い物なのでどれにするか
決断できないまま何日も経ってしまった。そしてある時ふと思った。

「このまましばらく、電子レンジなしで暮らしてみようか」

子供の頃はまだ実家に電子レンジはなく、母は「蒸し器」でご飯を温め直したり肉まんを温めた
り、ふかし芋を作ったりしていた。その後電子レンジが導入されてからも、やはり蒸し器で温め
たほうがおいしい、と感じていた。
その影響で、今も鍋にセットして使うステンレスの簡易的な蒸し器を持っている。
ただ、面積が狭いためあまり活用できず、つい電子レンジに頼ってしまっていた。
もっと蒸し器を使う生活をしてみよう、と思い、以前から欲しいと思いつつ躊躇していた「せい
ろ」を購入した。

電子レンジなしで暮らしたこの夏だが、それほど不便を感じることはなかった。

もともとあまり食べない冷凍食品やコンビニ弁当類はほとんど買わなくなり(ただし冷凍餃子だ
けは冷凍庫に常備している)、せいろがあるから、という理由で肉まんや焼売を買う頻度が増え
た。蒸し野菜はまだあまり作っていないが、野菜の甘さの中に竹の香りがほのかに感じられて
とてもおいしい。
9月になり涼しくなってきたので、これからもっとせいろを活用することになりそうだ。

電子レンジのない暮らしをするなら、いっそのこと炊飯器もやめてしまおう。
こちらも以前から興味があった土鍋を買ってみることにした。

土鍋は、少し慣れが必要だった。
火にかける時間と、火を止めて蒸らす時間の見極めが大事で、炊飯器のようにスイッチを入れ
るだけというわけにはいかない。
ただし慣れてくると徐々に、少しおこげがありつつも鍋底にこびりつかない、ベストなご飯が炊
けるようになってきた。
ツヤがあり少し芯のあるご飯はとてもおいしい。
炊飯器の約半分の時間でご飯が炊けるのも、帰りが遅い時などは助かる。

食欲の秋に向け、電子レンジも炊飯器もない暮らしは上々のスタートを切ったのだが、一つだ
け問題が残った。
以前は電子レンジのトースト機能を使って焼いていた朝食のパン、今はフライパンで焼いてい
て、悪くはないのだがトースターに比べるといまひとつなのだ。
火加減を調節してみたり、蓋をしてみたり、いろいろ試したがどれもいまいち。
やはりトースターだけ購入しようか、いや、それならトースター機能付き電子レンジを買ってし
まった方がいいのでは?
あれこれ迷っているうちに冬を迎えてしまいそうな、そんな気がしている。

イラスト:伊藤敦志


矢舟テツロー YAFUNE TETSURO シンガーソングライター/ジャズピアニスト sites.google.com/view/yafune/