旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第九回 ミツバチのささやき 10月。スペイン最南端の鉄道駅アルヘシラスから、朝一番の電車に乗る予定を立てていた。駅から徒歩5分ほどのところに宿をとり、早朝、起きてカーテンを開けると、外はまだ真っ暗。予定通り身支度を整える …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第八回 未来世紀ブラジル 米国オレゴン州、ポートランド。夏の6〜8月、毎月最後の木曜夕方、街の北東にあるアルベルタ通り約1kmを会場に、地元の人たちがプロ、アマ問わず芸術作品を発表しあう「ラスト・サーズデイ・オン・アルベ …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第七回 インセプション バルセロナ、モンジュイックの丘に建つ国立カタルーニャ美術館。1929年開催のバルセロナ万国博覧会メイン施設として建設された国立宮殿の建物を引き継いでいる。「宮殿」の名に相応しい壮麗な左右対称の建物 …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第六回 ブンミおじさんの森 タイの古都アユタヤ、チャオプラヤ川沿いの草地に広がる煉瓦作りの寺院、ワット・チャイワッタナラームは、約400年前に建てられ、約250年前に隣国との抗争で徹底的に破壊された。つい30年前まで手付 …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第五回 ランニング・フェンス 米国西海岸、サンフランシスコから車で南に1時間、乾燥した薄茶色の丘が緩やかに続く土地。東京からここへ引っ越してきたのは夏の始め。最初の夏は、景色の単調さに辟易していた。昼間は一面の青空に、暴 …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第四回 エクス・マキナ 12月、夏のパタゴニアで氷河の上を歩いた。氷河の両岸には森が広がり、小雨が降り注いでいる。雨雲が低く垂れ込める中、岸から眺める氷河は乳白の水色に発光していた。氷河だけ異空間から投影されているかのよ …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第三回 ムード・インディゴ うたかたの日々 よく晴れた5月のパリ。坂を上りきってパンテオン広場に出た途端、刺すような風が吹き抜けた。目に入る光の強さと肌で感じる風の冷たさが結びつかず、狐につままれた気分で広場を進む。程な …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第二回 ストレイト・アウタ・コンプトン キューバに着いて24時間も経つと、私はインターネットから暫く離れる事実に落ち着かなくなった。Wi-Fiもなく、数少ないインターネット・カフェの外には数時間待ちの行列。自分のスマート …


旅の記憶、映画の鍵
維倉みづき

第一回 天使の涙 5月の香港、朝6:30。うっすら白む空の下、私は中環からスター・フェリーの始発に乗った。船が埠頭の影を出た瞬間、右手から真っ赤な朝日が差し込んできた。朝日と夕日は、空気中に不純物が多いほど、太陽光が多く …