答えのないこと 第十六回 「お前の噂を聞きたい」
映画好きだった曽祖母の影響で、 幼い頃、母は町の芝居小屋に よく連れられて観に行ったという。
回り舞台や花道、枡席などがあり、 古くは歌舞伎や芝居なども 盛んに公演されていた劇場。
その頃から母の一番好きな映画は 「ニュー・シネマ・パラダイス」だった。
50年後、母は半世紀ぶりに 故郷を訪れた。娘の私を連れて。
愛媛の小さな街を歩きながら オーバーラップしたのは、 映画を愛した主人公の少年トトと 少女だった母の郷愁と感傷。
私も娘をいつか 自分の生まれ故郷に 連れて行くのだろうか。
愛するからこそ、 突き離すのだろうか。
維倉みづきさんの連載を通じて 最近ふと思い出した、旅と映画の記憶。