02. 天使は見ている

旅のホテルもハンドバッグもバレエの公演チケットも、
そのどれをも私だって贅沢だと思うけど、
私が自分の暮らしの中で、一番の贅沢を挙げるなら、
それはお花を買うことかもしれない。

枯れて 棄てて 買って
枯れて 棄てて 買って
枯れて 棄てて 買って
枯れて 棄てて 買って
ねえ、もしも私にお花を買うお金がないときは、誰か私にお花を買って。
お金がなければ摘んできて。

無駄遣い。そうかもしれない。
何年か前、部屋で花束の水揚げをしていると、
遊びに来ていた女友達が、吐き捨てるように私に言った。
「部屋に花を切らさない、そんな余裕ある暮らし、私には無理」

そうね、お花は高いわね。
それが種であろうと苗であろうと花束であろうと、
都会で手に入れるならお金を払って買うことになるもの。

だけど、私はネイルサロンにも行かないし、お酒を飲みに行ったりもしない、
つまりそれほど贅沢な女じゃないのよ。
わたしにとって、お花を育てることが、お花を飾ることが唯一の、本当に唯一の贅沢なの。
お花があれば幸せで、お花さえ眺めていられれば幸せなの。

心の中でそうつぶやいた瞬間。
あ!
目の前を白い羽根が横切った。 そして、息を呑む間もなく、すばやく私の右肩に回り込むと、天使は耳元でささやいた。
「嘘つき」
意地悪な、笑顔で。

tothemars02

(2015.12.03)