第六回 愛ゆえに

映画を見て感動する。
本を読んで恋をした気持ちになる。
絵画を知って歴史に想いをはせる。
写真の中に写ってる人を好きになる。
音楽を聴いてうっとりする。

グラフィックデザインもそれらと同じように
人を心を動かせないだろうか?
売りたいものを売るだけではなく
人それぞれの時間や人生に寄り添えないだろうか?
恋が芽生えるような気持ちにできないだろうか?
そのためには自分の一生をかけてもいい。

ある日、良い言い訳を思いついた。

「ラブソングばかり作って歌う音楽家が普通にいるでしょ?
僕はグラフィックデザイナーとしてそれになりたいのです。
“デザイン界のボビー・コールドウェル”ってどうでしょうか」

ボビー・コールドウェル「イブニング・スキャンダル」
雑誌で見たジャケットに魅かれておこずかいを握りしめ、祖母の家から畑や林、牧場を抜けて駅前に走って買いに行った1枚。明るい色をした南国の果物の匂いがする。