私のかけら 05  長谷部千彩

――これはかけら。季節のかけら。東京のかけら。私のかけら。

7月×日 悩み

ここ数日、毎日机に向かっている。完全に運動不足。頭ばかりが疲れている。少しでも歩くようにと、心がけてはいるけれど、それでも全然足りないと思う。いい加減、ジムにでも入って習慣づけないとダメかも。

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7月×日 It was middle of journey

終日、原稿書き。
午後、休憩も兼ねて、涌井駿さんの個展『It was middle of journey』を観に行く。アジア旅行で撮影されたシリーズが良かった。アジアの国って、フォトジェニックだよなあ、と改めて思う。
帰りにジムへ。入会手続きをする。

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7月×日 予感

昼、広東語のレッスン。
午後、原稿書き。
夕方、ジムへ。

手こずっていた原稿、もう一息というところまで来た。
入稿するまでは何とも言えないけれど、週末には形になりそうな予感。

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7月×日 ビリー・エリオット

午後、打ち合わせ。
夕方からミュージカル『ビリー・エリオット』プレビュー公演へ。

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7月×日 推敲作業

原稿、形になってきた。あとはひたすら推敲するのみ。

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7月×日 昼寝を四時間

朝からジムに行ったら疲れてしまい、午後、四時間も昼寝してしまった。
目が覚めたときには既に夕方。一瞬、慌てたものの、前夜、眠れなかったことを思い出し、休日の贅沢ということに。
今年初めての桃を食べ、原稿の推敲作業に取り掛かる。明日には完成しそう。

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7月×日 初めてのヨガ

昨日完成させた原稿を、朝、読み直してから編集部へ送る。難産だった一編。気に入ってもらえるといいのだけれど。ともあれ、無事に終わって、解放感でいっぱい。嬉しい。
午後、雑事を片づけ、夕方、ジムへ。初めてヨガのクラスに参加する。でも、勝手がわからないこともあって、あまり楽しめなかった。マシンを使った運動のほうが、私は、マイペースでできて楽しい気がする・・・。それとも、しばらく続けてみれば、ヨガの楽しさがわかるのかしら。モヤモヤ。

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7月×日 フワフワ感

午後、打ち合わせ二本。そのうちの一本は、ウェブマガジン(memorandom)のミーティングだった。いろいろと話しているうちに、もう少し更新をスローペースにしてもいいかも、という意見が出た。いまは、4、5日おきに原稿を入れ替えているけれど、もっとのんびりした感じにもっていってもいいのでは、と。いまの時代、誰もが自分の作品を発表する場(ブログやツイッター、インスタグラムなど)は持っているし、また、その場を活用するペースも全体的に速いから、速さはそういったそれぞれの場に任せて、memorandomは、絞り込んだ内容でゆっくり更新していったほうが、確かにフワフワ感が出るかもしれない。あと、私個人の希望としては、スタッフが本業で忙しいときは更新が止まるような、人力感のあるサイトにしたい。読んでいるひとが、あー、いま、みんな忙しいんだなーと思うぐらい、生々しいサイトに。どうかな(考え中)。

 

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7月×日 No.19 プードレ

取材の後、編集者Wさんと長い打ち合わせ。頭をフル回転させての二時間半。くたくたになって帰宅。メイクを落とし、癒しを求めてシャネル No.19 プードレ(香水)をつける。清潔感のある優しい香りにほっとする。やっぱりジャック・ポルジュ(調香師)の香水はいいなあ、とうっとり。今年の夏は、この香りをメインに使おうかな、という気に。

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7月×日 ヴィヴィアン・マイヤーを探して

一昨日は雨で涼しかったのに、昨日、今日とまた蒸し暑くなった。仕事もさっぱり捗らず。氷水ばかり飲んでいる。夕方、明日からの旅行の準備をする(乗車券の予約など)。

昨夜観た映画→ジョン・マルーフ監督・ドキュメンタリー『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』。非常に後味の悪い作品だった。ジョン・マルーフというひとの俗気ばかりが目につき嫌な気分に。このような映画まで作られて、ヴィヴィアン・マイヤーというひとも、死後、作品を発見されて幸せだったのか、不幸だったのか・・・。
以下、作品の概要(アマゾンの商品紹介より転載)。
――オークションで偶然発見された天才女性写真家、ヴィヴィアン・マイヤーに迫るドキュメンタリー。15万枚以上の作品を残しながら、生前1枚も公表せずに亡くなった彼女のミステリアスな生涯と人物像を紐解いていく。

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7月×日 カナカナゼミ

朝、新宿バスタから長距離バスに乗って長野県へ。週末の渋滞にかかり、目的地まで三時間ほどで着く予定が四時間もかかってしまった。午後、避暑に来ている家族と無事合流。東京とは比べ物にならないほどの涼しさ。鳥の声に癒される。夕方にはカナカナゼミの声。

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7月×日 七月後半

今月後半は、頼まれた原稿を書いただけで終わってしまった。制約の多い依頼で手間取ったから仕方がないけれど、単行本の制作作業に手を付けられなかったのは心残り。来月こそは頑張るぞ!・・・などと殊勝に誓うのも、涼しい長野にいるからだろうか。東京に戻れば、ひたすら暑い日々の中で、また、生きているだけで精一杯です、という気持ちになるんだろうなあ。東京の八月は人間を投げやりにする。というか、東京の八月は人間をダメにする。というか、毎年八月、私はダメになっている。暑いのが苦手です。

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7月×日 インターネットのある時代

夕方、蝶々が飛ぶ庭を後に、高速バスで東京に戻る。車窓から山間の村落を眺め、ぼんやり思う。インターネットのある時代、こういう場所にも、もしかしたら私の文章を読んでくれるひとがいるかもしれないなあ、と。東京で仕事をしていると、時々、日本=東京のような錯覚に陥ってしまう。自分の立つ位置から遠くにいるひとをイメージして書くように心がけてはいるけれど、それでも視野が狭くなりがちなのは問題だ。独りよがりにならないように、気をつけなければ。
この頃、よく考える。文章って難しい。